中計目標は営業利益率5%、海外にも挑戦
――メンテナンスを得意としている同業者の日立電子サービスは、グループのSIerである日立情報システムズと10月1日付で合併する決断をしました。今井社長は、インフラインテグレーションや運用サービスを伸ばすうえで、他の事業体、組織を取り込む必要性を感じておられますか?
今井 10年4月に富士通のインフラサービス事業本部のスタッフ約170人を、富士通エフサスに移管しました。サービス技術を開発しているスタッフや、LCM(情報システムのライフサイクル全体を管理する)手法を企画・実施している部隊などが入っています。新しい組織を取り込むよりも、この約170人との連携をいかに業績に結びつけるかが先決です。
――別の観点からの組織強化策として、クラウドを伸ばすために、データセンターを自前で保有・運用することは念頭に置いておられますか?
今井 富士通を含め、富士通グループ会社のなかにはデータセンターを構築・運用している企業が多くいますからね。自前で構築するというよりも、そうしたグループ企業との連携という選択肢でしょう。
――今後の業績計画について教えてください。現在、10年度から進めている3か年の中期経営計画の2年目を迎えています。
今井 昨年度は効率化やコスト削減策が寄与して増益でしたが、売上高は前年度を超えられませんでした。ですので、まずは今年度は増収増益でいきたい、と。先ほどから強化点に挙げている運用サービスは、2ケタは伸ばすつもりです。
そして、売り上げ、利益ではありませんが、こだわっているのが顧客満足度です。今年度は大きく七つの強化施策を推進していますが、顧客満足度の向上は、優先順位を引き上げました。今年度に限ったことではありませんが、何とか顧客満足度No.1を取って、それを継続したいと思っています
CS向上施策では「Speed & Delight」がテーマ。ユーザー企業に万一トラブルが発生した場合、できるだけ早く駆けつけてすぐに復旧させること。ユーザー企業の困りごとを可能な限り迅速に解決すること。そして顧客に喜び(Delight)を与え、感動・感激してもらえればと思っています。
――中期経営計画の最終年度の目標について教えてください。
今井 中期経営計画では、今から年末にかけて最終年度の目標を見直すつもりですが、連結営業利益率5%の確保を目指します。
――海外マーケットについてはどう捉えていますか?
今井 富士通は、海外事業の比率を高めようとグローバルビジネスを加速させていますから、富士通エフサスとしても、当然ながら海外市場でのビジネスを拡大していかなければなりません。
今のわれわれの海外事業といえば、海外に進出した日本のユーザー企業に駐在員を派遣して、万一トラブルがあったら、サポートメンバーを追加派遣して解決するくらいのもの。まだまだやらなければならないことがあります。中期経営計画では、海外事業の目標や具体的な計画は定めていませんが、今年度の後半くらいから富士通と連携しながら具体的なアクションプランを策定できればと思っています。
・こだわりの鞄 3年ほど前から愛用するビジネスバッグ。ノートPCを持ち歩くことが多い今井社長にとって、鞄自体が重いものはNGとか。鞄は軽いことが前提という。取っ手にもこだわりがあって、「太いと持ちにくいので、細目の取っ手の鞄を好んで使う。グリップした時の持ちやすさを重視する」そうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
トラブル対応がビジネスの保守サービス会社にとって、東日本大震災の被災企業の復旧は、大きな仕事だった。全国どこでも均一のサービスを提供することが至上命題の保守サービス会社は、津々浦々に拠点とスタッフを置いている。富士通エフサスも、全国に約170拠点を設置し、4600人ほどのサービスエンジニアを配置する。東北地方にも、ユーザーもスタッフもいた。自社の従業員の安否を確認すると同時に、ユーザー企業の現状把握と復旧に努めた。その陣頭指揮を執っていたのが今井社長だった。「今回の震災で約5800件のインシデントが発生したが、(7月上旬の段階で)99%は解決済み。6月28日には通常通りのサービス提供体制に戻した」。
保守サービス会社を取り巻く環境は厳しい。クラウドが主流となる時代が到来すれば、全国の拠点やスタッフのあり方も変わるかもしれない。しかし、今回の震災では、その強固なサービスインフラが多くの被災者を救ったのだ。(鈎)
プロフィール
(いまい ゆきたか)1953年1月18日、新潟県生まれ。71年、富士通入社。06年、システムサポート事業本部長代理。07年、インフラサービス事業本部長代理。09年、富士通エフサス執行役員。11年6月24日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
1989年3月1日、富士通の保守・修理事業部門が分離・独立し、富士通カストマエンジニアリングとして設立された(07年に現社名に変更)。主な事業は、「コンピュータの保守・修理(メンテナンスサービス)」「インフラインテグレーション」「運用サービス」「プロダクト販売」。保守サービスの売上比率が依然高いが、最近力を注ぐインフラインテグレーションや運用サービスの比率が上がってきている。富士通の100%出資子会社で資本金は94億175万円。従業員数は約5000人で、2010年度(11年3月期)の売上高は約2530億円。