今年1月、日本AMDは新基軸のプロセッサ「Fusion APU」を発売した。また、サーバーでは「Opteron」シリーズのコア数を増やし、拡販に力を注いでいる。その陣頭指揮を執るのが、昨年11月に就任したニック・ラザリディス社長。ビジネス拡大の柱に真っ先に「人材」を挙げるラザリディス社長に、日本AMDの描く未来像を聞いた。
適材適所の人員配置で社内整備
――昨年11月に日本AMDの社長に就任されました。会社の第一印象はいかがでしたか。
ラザリディス 非常に可能性のある会社だと感じました。すべての社員が意欲的に仕事をしている。会社を伸ばすための要素は十分に揃っていました。この意欲をもっと伸ばすことはできないか、強力なチームにできないかと考えました。そして私自身も、会社の基盤を強化して日本市場でのシェアをさらに伸ばしていこう、日本市場での地位を高めていこうという意欲が湧いてきたのです。
――基盤を強化するために行ったことは何ですか。
ラザリディス 人材を生かすことを考えました。情熱をもっている社員は、会社にとって大きな資産。それを生かさなければならない。そこで、社員のスキルを高めるために、また、目の前のチャンスを見逃さずにビジネスを拡大していくために、適材適所の人員配置を行いました。
――具体的には……。
ラザリディス 営業人員を増やしました。私が就任した当時と比べて、今はすでに40%程度は増えています。この人員体制の下、PCやサーバーのメーカー、SIer、家電量販店などとのパートナーシップを深める活動に力を注いでいます。パートナーシップをさらに深めていくために、年末までには従来の2倍程度には営業部門を増強する予定です。
――パートナーシップを深めれば、ビジネスを拡大することができる、と。
ラザリディス もちろんです。パートナー企業が求めていること、消費者やユーザー企業から挙がってくるご要望に応えていかなければなりませんし、当社のビジネスがどのような方向に進んでいるのかをきちんと理解していただかなければならない。パートナー企業とのコミュニケーションは重要です。そのために営業人員を増やしました。
しかし、それだけではパートナーに頼ることになってしまう。“他人任せ”の受け身ではなく、こちらから積極的に提案していく。当社自身も強くならなければなりません。
昨年までは、とにかくビジネスを拡大するために、何でもやってきました。しかし、これからは各領域でプライオリティを定める、つまり、的を絞ってテーマを決めていくことが重要です。それが、当社の方向性を理解していただくことにつながると考えています。
――各領域のプライオリティとは、具体的に何を指すのでしょうか。
ラザリディス 例えばコンシューマ領域では、CPUとGPUを融合したプロセッサ「Fusion APU」です。今年1月に市場に投入した「Fusion APU」は、現在までに各メーカーから次々と搭載パソコンが発売され、ビジネスは非常に順調に推移しています。競合他社に先駆けた製品だったということ、発売後もラインアップを充実させていったことが、好調の要因です。ここで一気に需要を増やしていきます。
法人市場では、「クラウド」を切り口にプラットフォームの提供を目指し、サーバー向けCPU「Opteron」をデータセンター(DC)に拡販していきます。コア数がカギになってきますが、当社はいま、12コア製品をもっている。また、近日中には16コア製品も投入する予定です。「Opteron」によって、DCクラウド・サービスの提供拡大に寄与できると確信しています。
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