小回りを利かせてシェアを伸ばす
――日本は大震災で打撃を受けましたが、IT市場をどのように捉えておられますか。
ラザリディス 東日本大震災は、ITに限らず、さまざまな業界に影響を与えました。被災地や被災者の方々のことを思うと決して「復興」とはいえませんが、IT業界としては徐々に「回復」に向かっていると考えています。とくにPCやサーバーは、今後、さらに買い替え需要が増えていくのではないかとみています。コンシューマと法人市場ともに、見通しは明るいと捉えています。
また、世界のなかでの日本をみた場合、これまで日本は最先端の技術を投入した製品を次々と出してきました。IT業界でいえば、世界でリーダーとしての地位を確立する可能性が十分にある。これは米AMD上席副社長としての発言になりますが、日本は非常に重要な市場です。
――競合他社の動きについては?
ラザリディス インテルさんはCPU、エヌビディアさんはGPUと、両社はそれぞれの分野で強いことは確かです。しかし、当社には先ほども申し上げた「APU」がある。CPUとGPUの両方で強みを発揮することができます。
――いかにして、シェアを伸ばしますか。
ラザリディス シェアを伸ばすには、二つの方法があります。一つは競合から奪うこと。もう一つは市場を広げることです。長期的には、「APU」をさまざまな分野で使っていただき、市場そのものを広げていくことを目指します。そのためには、プロセッサを提供するサプライヤー(メーカー)として、価値を認めていただくことが重要です。IT業界に限っていえば、すでによい製品だと認めていただいていると自負していますので、当面は競合からシェアを奪うことに力を注ぐことになります。将来的には、業界の枠を超えて認められるように取り組んでいきます。
――CPUでは、インテルがシェアを確保していますが。
ラザリディス 確かにその通りです。しかし、パートナー企業は、「APU」の登場で売れる製品が増えたことを喜んでいます。消費者やユーザー企業も、「代替製品が増えた」と認識しているのではないでしょうか。当社は競合と比べると規模を含めて大きいとはいえませんが、その一方で小さいぶん小回りが利く。その武器を生かしながら、さらに社員のスキルを高めていくことでシェアを伸ばしていきます。
――売上目標はありますか。
ラザリディス 今年は前年比2倍を目標に掲げています。来年以降の目標について具体的には申し上げられませんが、日本法人として、3年以内にAMD本体のなかで存在感を十分に発揮できる会社になるよう、基盤を整えて売り上げを伸ばしていきます。
・お気に入りのビジネスツール 1年ほど前に購入したROLEX OYSTER PERPETUAL DATE GMT-MASTERII。腕時計は気に入ったものを長く愛用するそうで、「この時計を購入したのは、10年以上使っていたのが壊れたから」とのこと。日本時間だけでなく、米国時間も表示するので、「本社とのやり取りに欠かせない」という。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「パワフル」というのがインタビューを終えての印象。典型的な外資系メーカー本社幹部の姿だった。しかし、シビアといわれる外資系メーカーの幹部にはないものも感じた。それは、人材を非常に大切にしていること。「適材適所で社員を生かすことが、当社を成長へと導く」と断言する。ちなみに、「お気に入りのビジネスツール」を聞いたところ、「ツールというのは失礼になるが、なくてはならないという点では真っ先に思い浮かんだのが社員。だから、本当は、社員全員を『お気に入りのビジネスツール』として紹介したい」と言い切った。
自社の社員を語るとき、「意欲」「情熱」という言葉を多用したラザリディス社長、自身のなかにも意欲・情熱がたぎっている印象だ。製品については、「パートナーやユーザーにとっては選択肢が増えた」と謙虚。いい意味で、競争によって市場を活気づけてほしい。(郁)
プロフィール
ニック・ラザリディス
(NICK LAZARIDIS)エイサーやデル、レノボなどを経て、2009年10月、米AMDに入社。営業・マーケティングから戦略・提携・業務運用まで、約20年にわたって積み上げてきたノウハウを米AMDにもち込んだ。10年11月、日本AMD社長に就任。米AMDのワールドワイド・マルチナショナル・セールス担当本社上席副社長を兼務する。
会社紹介
米AMDの日本法人として、1975年2月4日に設立。パソコンやサーバー向けにプロセッサを提供するメーカーとして製品を次々と発売し、2011年1月には、新しいプロセッサ「Fusion APU」を発売した。APUは、現段階ではパソコンへの搭載が中心だが、今後はタブレット端末への搭載のほか、M2M(マシン・トゥ・マシン)のFA(ファクトリー・オートメーション)などへの搭載も促していく。