3月11日に起きた東日本大震災を受けてスタートした2011年度(12年3月期)。富士通の山本正已社長は、「ダメージは当初の想定の半分で済んだ」と言う。先行き不透明な環境は今も変わらないが、「いつまでも悪い時期は続かない。私は楽観視している」と、2012年のIT市場環境を読む。国内屈指の総合コンピュータメーカーのトップは、決して後ろ向きな発言をしない。大震災を経験した2011年を振り返り、新年の見通しを語った。
感じた“日本の底力”
――2011年は、どんな年でしたか。
山本 東日本大震災の翌月に11年度(12年3月期)がスタートしたので、期首はかなり厳しい状況を予想していました。しかし、6月以降は回復し、上期は前年同期比でプラス成長できました。下期は、タイの洪水など新たなマイナス要素が発生して再び厳しくなりましたが、大震災からの復興・復旧のスピードは予想以上に速く、日本の底力、力強さを感じました。
――富士通も被災し、ものづくりを継続することが危ぶまれたのではないでしょうか。
山本 当社もサプライチェーンに大きな乱れが生じて、確かにダメージを受けました。しかし、そこから復活する現場の力は、私の想像以上に強かった。長期的にものづくりが滞る最悪の事態は回避できて、震災直後に想定していた半分の被害で済みました。
――ユーザー企業のIT投資額に変動はありましたか。
山本 大型の投資を延期したり、中止したりする傾向は瞬間的にはみられましたが、どんな場合であってもITなくして企業経営は成り立ちませんし、そのことをユーザー企業・団体も理解していますから、ユーザーは震災後も継続してITに投資しています。
また、震災がIT需要を喚起している部分もあります。乱れたサプライチェーンを再構築するためのIT投資もありますし、企業の間では、BCP(事業継続計画)を根本から見直して、再作成したBCPを実現するためにITに追加投資する動きもありました。クラウドへの関心が高まったのも震災があったからでしょう。決してマイナスばかりではありません。
――2012年のIT投資をどうみていますか。
山本 私は楽観視しています。経済というものは、落ち込む時もあれば上昇する時もある。落ち続けることはあり得ませんので、12年は徐々に上向くのではないかな、と。天気でいえば、「曇りのち薄晴れ」といった感じでしょう。
――リーマン・ショックのような事態に陥らないかと、不安に思っているIT業界人が多いですが、その心配はない、と。
山本 リーマン・ショックの時と違うのは、クラウドに対するユーザーの関心度合いです。あの時に比べて、はるかに意欲は高く、それがIT産業の成長を支える要因になるでしょう。
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