DCからスマート端末までカバー
──NECグループのSE会社は地域別に分かれていますが、例えば首都圏などを担当するNECソフトに比べてどのような強みをおもちなのでしょうか。
富山 これは私が2011年6月に社長に就いてからずっと強調してきたことなのですが、当社の強みは“システム技術”領域への徹底的なこだわりにあります。アプリケーション開発を手がけるSIerは数多くありますが、ハードウェアやネットワーク、OS、ミドルウェアなどシステム基盤の構築に熟達しているシステム会社は、国内でもそうそうありません。NECグループ内でも組み込みソフト開発といえば、まずNECシステムテクノロジーの名前が挙がるのは、こうした技術的背景があるからです。
システム基盤部分でいえば、NECグループと中国大手SIerの東軟集団との合弁事業で、11年6月から大連で本格的に立ち上げたクラウド指向データセンター(DC)の構築に当社も参画していますし、NECグループのBIGLOBEホスティングの基盤にも携わっています。クラウドサービスを支えるDC基盤から業務アプリケーション、Androidなどのスマートデバイスに至るまで一貫したシステムを構築することができる。アプリケーションやハードウェアの単体に強いのではなく、システム全体の構築を得意としている点が、当社の最も大きな特徴といえます。
──新年度がスタートしましたが、今期重点的に取り組む領域は何ですか。
富山 大きく二つの潮流があるとみています。少子高齢化が一段と進むなかで安心で安全な暮らしをシステム面で支えてほしいというニーズと、企業の事業継続計画(BCP)に関するニーズです。前者は広い意味で社会全体を支えるスマートコミュニティ的なビジネスに発展していくことが期待されていますし、後者は東日本大震災の教訓を生かすかたちでITシステムの再構築が今後も進むとみられます。業種業態でみても、官公庁や医療・教育、通信・社会インフラ、金融、製造、流通サービスなどNECグループのすべての顧客層に当てはまる大きなトレンドといえます。
また、当社が開発したSAPなどのERPとの連携サービスや航空写真解析システムに代表されるような、他社にはない商材づくりにも引き続き力を入れます。航空写真解析の「RealScape」は、国内では固定資産税に関わる家屋異動判読業務で幅広く導入いただいており、海外では中国の上海や西安などにおける地図作成などに活用していただいています。SIサービスだけでなく、こうした商材づくりにも力を入れていくことで、NECグループ全体の業績拡大に向けた成長エンジン役を担っていく所存です。
・お気に入りのビジネスツール NTTドコモの「N-02C」。NECカシオモバイルコミュニケーションズ製で、「ビジネス用途での信頼性の高さや実用性の面ですぐれている」と高く評価する。近年はスマートフォンに押されがちだが、電話やメールといった基本機能に忠実で、根強いファンをつかんでいる機種だ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
NECのメインフレーム「ACOS(エーコス)」の開発におよそ22年間、システム開発に約13年間携わってきた経歴をもつ富山卓二社長。ハードウェアからアプリケーションのレイヤに至るまで深い知識と経験をもつ経営者だ。NECシステムテクノロジーはまさにハードからアプリ、サービスに至る一貫したシステム技術を強みとするSIerであり、富山社長のキャリアと重なる部分が多い。
かつて、メインフレームに代表されるプロプライエタリ(独占的)からオープンシステムへ変遷したように、ITの活用は今、大きく転換しつつある。
富山社長は、「クラウドを支えるDC基盤から、NECのLifeTouch端末に代表されるAndroidスマートデバイスまで対応できるトータルな“システム技術”で勝ち残る」と、NECグループのSE会社のなかでも、とりわけシステム基盤や組み込みソフトに長けた強みを伸ばしていく考えを明らかにした。(寶)
プロフィール
富山 卓二
富山 卓二(とみやま たくじ)
1950年、岡山県生まれ。75年、静岡大学理学部数学科卒業。同年、日本電気(NEC)入社。05年、MCシステム企画本部長。06年、執行役員兼通信・メディアソリューション事業本部長。08年、執行役員兼OMCS事業本部長。10年、取締役執行役員常務。11年6月、NECシステムテクノロジー社長に就任。
会社紹介
NECシステムテクノロジーの2011年3月期の売上高は775億円、社員数は約3800人。関西や中四国地区を中心に15拠点を展開しているほか、中国とインドに関連会社を抱える。NECグループのSE会社のなかでは、首都圏を担うNECソフトと、関西中四国を担うNECシステムテクノロジーの2社の規模が大きいことから“東のソフト、西のシステク”と称されている。