2012年4月1日付で、クレオの新社長に就任した林森太郎氏。持株会社制への移行について、「変革するのに時間はかかるかもしれないが、会社が変わる大きなきっかけになった」とみる。経営基盤を強固なものにしたうえで、目指すのは売り上げの拡大だ。新社長は、分社化した各事業会社の強みや特性を生かした持続的成長を果たそうとしている。
経営のスピードアップを実感
──2011年4月1日付で持株会社制に移行して以降、経営基盤の強化に取り組んでこられました。成果はいかがですか。
林 2012年3月期の決算を締めてみて、ヒト、モノ、カネという観点で分社の目的と成果を振り返ってみました。従来は、複数事業の特性をなかなか発揮しきれていないという状況があって赤字が続き、人材は流動性を欠いていました。いま一つ、変化に対応できていない停滞感があったことは否めません。こうしたネックを解消するために、カンパニー制を採るのか、事業部制にするのか、いろいろな選択肢がありました。一気に分社化してしまうと、オーバーヘッドコストが増えて、マイナス要因が大きくなるのではないかと懸念する意見もありました。ですが、マイナス面を考慮しても、これまで抱えていた課題の解決に有効に働くと判断して、持株会社制への移行に踏み切りました。
40年弱のクレオの歴史のなかで培われた文化があるので、そう簡単に変わることができるとは思っていません。時間はかかりますが、変わるきっかけにはなったと感覚的には評価しています。感覚的と表現したのは、アナログの要素があるので、成果を測るのが難しいからです。ただ、経営トップと現場の距離感が縮まって、経営のスピードが上がっていると思います。
事業部ごとに再編しているので、それぞれの事業に最適な人事制度や組織づくりができます。社員一人ひとりにも「変わっていかなければならない」という意識が芽生えてくるでしょう。これは、分社化せずにやろうとすると難しい。アナログ的な思考を変えるには、まずは形から入ることが重要です。
──社長に就任されたのは、今年4月1日付です。クレオマーケティングの社長に就任された時は、ERP(統合基幹業務システム)である「ZeeM」畑を歩んでこられた経緯から順当だと感じましたが、今回のトップ就任については、どのような背景があったのでしょう。
林 今年2月くらいに、急遽、社長に決まりました。前任の大矢(俊樹社長)から引き継ぐことになって、若干予想外だったというのが実感です。クレオの役員には、会長の土屋(淳一)と社長の大矢、私、それから社外取締役がいました。後任社長の候補として、クレオの役員や事業会社の代表者が挙がっていましたが、大矢の前に社長だった土屋が返り咲くという選択肢はなく、結局のところクレオの役員と事業会社の代表を務めているのは私だけだったので、条件からして社長になった、ということです。
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