生産スケジューラの国内市場で、過半数のシェア(テクノシステムリサーチ調べ)を占めるアスプローバ。1994年の創業以来、高橋邦芳社長が開発の陣頭指揮を執り、日本の製造業が納得する製品に磨き上げてきた。市場の先行きを見通すことがますます難しくなる状況にあって、2010年、一つの解として「Asprova SCM」を発売した。グローバルレベルでSCM(サプライチェーンマネジメント)を最適化しようとする製造業のニーズに対応する。
トップシェアの秘訣
──生産スケジューラの国内市場でトップシェアを握っておられますが、トップであり続けるためにどういう取り組みをしてこられましたか。
高橋 創業した1994年頃は、工場向けの汎用的な生産スケジューラが存在しませんでした。開発に挑戦するソフトベンダーは多かったのですが、成功しなかった。汎用的であればあるほど製品単価が下がるので、あえて開発しなかったというベンダーもあったのでしょう。私は、汎用的に動作する製品はきっと多くの製造企業が求めているはずだと考えました。しかも、安価に提供したいという思いがあって開発してきました。そうこうするうちに、製造業は多品種小ロットの生産を求められるようになってきて、生産スケジューラのニーズはどんどん高まってきたのです。
1994年から2000年近くまでは、当社が単独で市場を走っていたと思います。類似製品が登場してからは、差異化のために、人手でやっていた生産計画をコンピュータ化するレベルを脱して、納期の確約と短縮、在庫削減といった経営戦略に関わるツールとなってきました。
さらには、グローバル化が進み、国内企業が世界に展開する工場をつなぐ生産スケジューラのニーズが旺盛になったことを受けて、2008年10月には「Asprova SCM」を開発することを決断しました。開発のスタートから2年ほどを要し、発売にこぎ着けたのは2010年6月のことです。昨年から今年にかけて、新製品として営業活動を展開しています。
当社の製品は、カスタマイズなしの、パラメータ設定だけであらゆる工場に対応できるので、導入コストを低く抑えられるのが強み。顧客からすると、多拠点展開のニーズに対応できるのは、当社の製品しか選択肢として残らないと思います。
顧客のニーズに素早く対応して開発することで、常に他社の一歩先を行くことができたと考えています。
──「ニーズに素早く対応する」というのは、言うのはたやすいですが、実際には難しいことですね。
高橋 どんなビジネスにも共通しますが、一つは顧客に役に立つ製品を供給したいという思いがまず先にあります。それから、顧客とじかに会って話をしたりメールをしたりするなかで、顧客が困っている情報を膨大に収集し、将来困るであろうことまでを分析しています。これは当社の強みだと思います。
──顧客はどのような課題を抱えてきましたか。
高橋 IFRS(国際財務報告基準)対応をどうするのかというのがスタート地点にあります。海外の生産拠点やサプライヤーがどんどん増えていく状況にあっても、会計処理は必ずついて回りますから。世界各地の工場の管理はバラバラでいいのかといえば、そんなことは決してありません。例えばメキシコで工場用地を取得して、当局の認可を受けて建設し、生産設備を搬入して、ラインをつくって生産にこぎ着けるまでで精一杯という企業が普通の姿でしょう。データの管理は「現地で考えてくれ」ということですね。こんな具合でERP(統合基幹業務システム)や手組みのシステムが乱立すれば、統合する際にとても困ったことが起きる。
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