2009年、エポック社は、グループ内の製品検査会社だった中国のエポックトイズを、仕入先を一元化する購買窓口企業にすることに決めた。同社は、サプライチェーンマネジメント(SCM)における受注手配製品「φ-Conductor OF」をほぼノンカスタマイズで導入。エポックトイズから中国の直営工場および委託工場、日本の物流拠点を結ぶグローバルSCMをわずか3か月で構築し、10年1月に稼働させた。

システム配置のイメージエポック社
会社概要:1958年設立。玩具、ホビー、雑貨などの開発や製造・販売、輸出入を手がける。野球盤やシルバニアファミリーなどのヒット商品を生み出した。主力のシルバニアファミリーは2010年、発売25周年を迎えた。
システム提供会社:フェアウェイソリューションズ
ソリューション名:φ-Conductor OF
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フェアウェイソリューションズ 原田英典部長 |
エポック社経営管理部の山崎和弘エグゼクティブマネージャーが、フェアウェイソリューションズのSCMソリューション「φ-Conductor」を知ったのは今から6、7年前のこと。飛び込みで来社した営業担当者から製品を紹介されたことがきっかけだった。営業担当者の話を聞き、すぐに興味をもったという。山崎氏は「非常に淡々と、無機質な口調だったが、手配周りの機能がすぐれていることがわかった。現場を把握し、実ビジネスに沿った概念が製品に盛り込まれていることも伝わってきた」と振り返る。
エポック社では08年暮れから09年初頭にかけてエポックトイズを購買窓口企業にする方針を決定。その方針を09年の春ごろに伝えられた山崎氏は、09年6月に稟議を上げ「φ-Conductor OF」の導入を決定した。フェアウェイソリューションズ プロダクトマーケティング部の原田英典部長は「業務の効率アップになることや、プロダクトの先進性が評価された」と話す。
山崎氏が「φ-Conductor OF」を選定したポイントは四つある。(1)通常の購買管理、販売管理、在庫管理の基本機能を備えていること(2)これらの各管理データを会計データとして利用できること(3)ウェブ対応により、中国と日本でデータを一元的に管理できること(4)「予定ATP(Available To Promise=出荷可能在庫量)計算」の機能がすぐれている点。「とくに重要だったのがATP。在庫入荷予定まで含めて受注手配業務を遂行できる製品を探していた」(山崎氏)ことが決定打となった。
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フェアウェイソリューションズ 村岡研一部長 |
「φ-Conductor OF」は注文から納品までの業務プロセスをシミュレーションできる受注手配のための製品。送られてきた注文情報に対して複数にまたがる工場倉庫の在庫を照合。在庫引当や輸送便、輸送ルートを踏まえた入出荷指示を出すことが可能だ。工場への発注や、工場倉庫間もしくは工場倉庫から監管倉庫への移動指示、日本の物流センターへの直送指示、監管倉庫からの出荷指示などを自動処理する。
「φ-Conductor OF」が受注手配に特化したエンジンとして過不足ない機能を備えていたことから、最小限のカスタマイズのみを加えて10年1月に稼働させた。わずか3か月という導入期間だった。
新しいシステムの導入で、ビジネスプロセスの再構築(BPR)による生産性アップに成功。ウェブベースのシステムで基本取引を管理することで、エポック社側からも状況が把握できるようになった。
山崎氏は「フェアウェイソリューションズはSCMのプロフェッショナル。エンジニアが優秀で、当社の立場に立った的確な指摘や提案をしてくれている」と高い信頼を寄せている。

エポック社
山崎和弘エグゼクティブマネージャー
グローバルSCMが稼働し始めたのは、まだ第1フェーズにすぎない。フェアウェイソリューションズ システム部の村岡研一部長は「第2フェーズとして、エポック社が従来から運用しているオフコンのシステムと『φ-Conductor OF』のデータ連携を進めている最中だ」と話す。データ連携が完了すれば、生産から一気通貫で商品の動きの情報を把握できるようになる。(鍋島蓉子)
3つのpoint
・購買、販売、在庫管理を会計データに
・日本と中国の間の取引情報を一元管理できる
・とくに「予定ATP計算」の機能がすぐれている