通信とコンピュータの両方に強み
──北陸と首都圏、関西の主要データセンター(DC)を結んだ国内初の広域仮想クラウドサービスを立ち上げましたが、これもストック型ビジネスの一環なのでしょうか。 滝澤 そうです。このサービスは「EINS WAVE(アインスウェーブ)」といい、VAN事業のスタート以来、当社が培ってきた通信とコンピュータの両方のノウハウを結集したサービスです。国内3地域6か所のDCを、超高速ネットワークで接続した広域仮想クラウドとして、今年6月、サービスをスタートしました。おかげさまで、情報システムの分散配置による高い可用性をもったプライベートクラウド用途などで、顧客から多くの引き合いをいただいています。利用目的に合わせて地域や機能を選択できる柔軟性は、BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)の観点からもメリットが大きい。
──グローバルと公共セグメントはどうですか。 滝澤 グローバル事業は、日本の情報サービス産業にとって、もはや欠かせません。業界の歴史を振り返ってみると、80年代の一時期、邦銀対応で多くのSIerがロンドンやニューヨークなどの金融都市に拠点を展開した時期がありました。あの時代は、私が米国に通信ネットワーク技術を学びに行っていた時期と重なりますので、今でも鮮明に覚えています。海外進出とはいっても、日本国内の経済が右肩上がりということもあって、当時の国内需要で何とかなるという雰囲気がどこかにありました。しかし、今は違います。もう、あのような時代には戻れないわけで、ユーザー企業とともに背水の陣でグローバル市場へ臨むことが必須となっています。当社は、中国の武漢、上海、大連、タイのバンコクなどを中心に拠点を展開しており、人材育成も含めて、海外事業をできる限り早く拡大していくつもりです。
三つ目の公共セグメントは、国内市場の注力分野と位置づけています。グローバルとドメスティックな公共では、一見、相反するような印象を与えるかもしれませんね。1964年に富山計算センターとして創業した当社は、地元富山の自治体をはじめ、地方公共団体から多くの仕事をいただいて大きくなってきた経緯があります。この分野は伝統的に国産コンピュータメーカーやNTTデータなど、一部大手SIerが優位な状況のなかで、当社の公共分野での実績は、同業SIerのなかでも誇ることができるものと自負しています。
──確かにDCと通信に強みをもち、公共分野で実績があるということは、今後のスマートコミュニティ関連ビジネスでも優位性を生かせそうです。 滝澤 医療福祉や環境、農林水産など公共系のITビジネスは、今後、大きく伸びる可能性がありますし、この分野で強みをもつことは当社の財産でもあります。民需はグローバル化が急速に進みますし、公共はいわゆるスマートコミュニティ絡みの方向でIT需要の拡大が期待できる。これにコンピュータと通信の両方に長けた当社の特性を当てはめていくことで、強いインテック、強いITホールディングスグループを実現します。
・お気に入りのビジネスツール イタリアの「MOLESKINE」のノートとiPad。ノートは息子さんから紹介してもらったのが使い始めたきっかけ。「A4の大学ノートだと大きいし、手帳サイズだと小さすぎる」とのことで、ちょうどいいサイズが気に入った。忘れてはならない情報などを書き込んでおく保存用ノートとしても活用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インテックは2014年1月に創業50周年を迎える。滝澤光樹社長が駆け出しの頃は、創業者から「空気に爪を立てろ」と、よく命じられたという。無から有を生むくらいのガッツで取り組めという意味で、「できないと思ったら、そこで終わり」だと教わった。滝澤社長は自らの経営姿勢について「やるリスクと、やらないリスクのどちらかを選べといわれたら、私は躊躇せずに、やるリスクを選ぶ経営者だ」と自らを評する。
前向きなリスクを覚悟しながら、「決して諦めないという気概で、次の50年を社員全員で切り開いていく」という考えを示す。80年代に米国で最先端のネットワーク技術を学び、VAN事業の立ち上げメンバーの一人だったこともあり、通信とコンピュータの両方に強いインテックの特色を深く理解している。俳聖・松尾芭蕉の言葉といわれる「不易流行」に共感し、「いいものは残し、変えるべきところは積極的に変える」ことを実践する。(寶)
プロフィール
滝澤 光樹
滝澤 光樹(たきざわ こうじゅ)
1951年、富山県生まれ。73年、富山大学工学部卒業。同年、インテック入社。99年、取締役。01年、常務取締役。05年、取締役CTO執行役員専務。07年、インテックホールディングス取締役副社長。08年、ITホールディングス取締役副社長。11年、インテックの取締役副社長。12年6月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
ITホールディングス(ITHD)グループのインテックの昨年度(2012年3月期)の単体売上高は前年度比3.9%増の929億円、営業利益は同10.8%増の37億円。ITHDグループ全体の昨年度連結売上高は同1.3%増の3274億円、営業利益は同21.9%増の156億円。インテックはTISと並んでグループの中核事業を担う。ITHDグループの中期経営計画では2015年3月期にグループ連結売上高3500億円、営業利益250億円を目指す。