ここ数年の間、売り上げや利益の減少に悩んでいる三井情報は、今年6月、トップが交代した。三井物産出身の齋藤正記新社長は、研究開発に積極的な投資を行い、独自の技術力を培うことによって他社との差異を明確にして、ビジネスの成長に挑む。社員を主体として、積極的に新しい試みに取り組む──。齋藤社長は、ユーザー企業への提案の仕方を変えることから事業改革に着手し、自ら顧客ニーズを読み取ってそれに対応することができる会社をつくろうとしている。
クオリティを提案する会社との認識を高める
──新社長の就任から約3か月が経ちました。現時点で、齋藤社長が三井情報の最大の課題と捉えておられることとは、何でしょうか。 齋藤 私は三井物産にいた頃、ネクストコム(三井情報の前身)と三井情報開発の合併に携わってきたので、以前から三井情報のいいところと悪いところを十分に把握しています。変化が激しい今の時代、ICTベンダーは、社員が主体的にお客様のニーズを読み取り、技術をどのように活用すれば、最適なシステムを提案することができるかということを考えることが重要になっています。しかし、三井情報は、仕事のやり方やアプローチの仕方が受動的で、社員が主体になって自らお客様に技術活用を提案することは、まだ十分にできていないのが実際のところです。
ここ数年、案件がじわじわ減っているのは、技術ノウハウにではなく、提案のスタイルに問題があるからだとみています。事業を維持・拡大するためには、仕事のやり方を根本から変えなければならない。
──就任されてからの短い時間で、仕事のやり方を変える必要があるということを、社員に伝える機会が十分にあったでしょうか。 齋藤 就任直後はバタバタしていて、社員と話す時間は限られていました。だから、私のメッセージはまだ浸透していないと思います。この10月に、役員メンバーとの合宿を予定しており、合宿では、管理層にビジネス改革の必要性を理解してもらい、仕事のやり方を具体的にどう変えるかの施策を一緒に考えたい。
新社長としての私のミッションは、事業の拡大そのものではありません。積極的にお客様にICTの活用シーンを提案し、「三井情報はクオリティが高いものを提案してくれる」と、多くの人々に思ってもらうために、この会社に来ました。そして、提案の仕方を改善した結果として、ビジネスを伸ばすのです。
──齋藤社長は海外経験が豊富で、海外で三井物産のビジネスを伸ばすことに大きく貢献してこられました。その経験をどのように生かして、三井情報で事業改革を断行していかれるのでしょうか。 齋藤 1990年代だったかな……。私はその頃、三井物産のドイツの拠点に赴任していて、ヨーロッパで取り扱う商材の大幅な整理に取り組んでいました。90年代のヨーロッパは、ノートパソコンや携帯電話の普及が始まり、携帯情報端末用部品の需要が高まる兆しがみえていました。私は、これはビジネスチャンスだと考え、携帯情報端末用部品の品揃えを拡充し、それらの販売にドライブをかけました。リスクも大きかったですが、戦略が力を発揮し、三井物産の欧州ビジネスを大きく伸ばすことにつながったのです。
このように、リスクを考慮しながら大胆な発想で新しい試みに取り組むチャレンジ精神を、これから三井情報で培いたい。
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