文教市場、製造業などに向けたシステムソリューションや衛星通信システムなどのネットワークソリューションを手がける理経は、昨年度、4年連続の赤字から脱した。今年4月に就任した黒田哲夫社長は、「もう一度、活発な理経を取り戻す」として、就任早々に組織を改編し、スピーディな経営体制を敷いた。自治体に目を向けた防災システムを“コア中のコア”と位置づけて拡販するなど、売り上げ100億円に復帰するための取り組みを進めている。
4期連続赤字の苦難を乗り越えて社長に就任
──昨年度、4年連続の赤字から脱して黒字に転換しましたが、かなり苦労してこられたのではありませんか。黒田 以前は、ピーク時で300億円ほどの売り上げがありました。ですが、リーマン・ショックの影響で、お客様が軒並み大規模な開発プロジェクトを凍結したことが影響して、当社の業績は一気に悪化しました。その後も回復できず、07年度から10年度まで赤字でした。確かに、苦しい時期を経験しました。
──業績不振に陥った理由を聞かせてください。黒田 教育機関は、当社の大切なお客様ですが、この分野での競合が激しくなり、開発プロジェクトの単価が下がったことが、理由の一つです。
以前は2~3社で競争し、10校に提案したらそのうちの2~3校は受注できていました。しかし、ここ数年は、一般企業がIT予算を抑えたことで、文教市場に参入するITベンダーが増えて、競合が激しくなりました。その結果、受注が難しくなり、たとえ勝ち取ることができても、単価が低くなっていますから、プロジェクトごとの売り上げが減ったのです。
それと、セキュリティ関連の事業でいくつか失敗したことも大きかった。再販契約を結んだ他社製品が不完全で、バグに泣かされ、数億円分の在庫を抱えたこともありました。
──黒字転換した直後の社長就任。社員へのメッセージにも力が入ったのではないですか。黒田 スタッフのみんなには、「昨日と他人は変えられないが、自分と明日は変えられる。新しいことに挑戦して、活発な理経をもう一度取り戻そう」と伝えました。それと、極めて基本的なことではありますが、「身だしなみをきちんと整え、気遣いを忘れず、謙虚でいよう」とも話しました。まずは、人や社会、仕事に対する社員の姿勢を変えたかったんです。最近、「会社が明るくなった」という社員の声が届いていて、少しずつ効果が現れてきたと感じています。
──会社を変える具体的な措置として、組織を改編しておられますね。黒田 理経の組織は縦割り構造で、各役員が事業部門を管轄し、社長が決裁するという仕組みでした。ただ、それでは各部門の横の連携が取れない。社長に話が上がるまでに、各部門を横串でみる組織が必要だと考えて、その役割を担う専門部署を今年度の期首に新設しました。この部門を設置したおかげで、風通しがよくなったと思います。
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