パートナー各社との協業を強化
──さまざまな製品を提供していくには基盤づくりが大切といえますが、社長に就任後からこれまで、どのような手を打ってこられましたか。 内藤 就任から最初の30日は、社内外を含めて関係者の人たちと、とにかくコミュニケーションを図ることに時間を費やしました。とくに、社外への挨拶回りでは、当社のよい点と悪い点を忌憚なく話していただきました。社内の課題、社外の声を含めて、今は、どのような戦略を立てるべきなのか、プランニングしています。
──販社やユーザー企業の声は、どのようなものでしたか。 内藤 すべての販売パートナーとユーザー企業を訪問し切れていませんので、一概にはいえませんが、当社は日本で1997年設立という歴史があり、そのベースがあるからこそ、信頼関係を築いています。ですが、なかには、「もう少し製品の投入を迅速にして欲しい」「グローバルで展開しているのに、なぜ日本では販売しないのか」など、お叱りの声がありました。このような声を聞いて、さまざまな製品を日本市場に投入しなければならないと実感しました。信頼関係のベースはあるが、マーケットを含めて当社の製品が、どのような広がりをみせるのか。とくに販売パートナーと、そのような会話があまりできていなかったのかもしれません。
──製品を絞るべきだと考えていた、と。 内藤 もちろん、単に多くの製品を市場に投入すればいいというわけではありません。ただ、当社の場合、米国が本社なだけに、どうしても米国市場が中心になってしまいます。例えば、日本語対応していない製品が多い。今後は、日本に最適な製品を次々と投入していくことを重視します。
──製品を増やすとなると、売ってくれる販社とのアライアンス強化も重要ですね。 内藤 その通りです。販売パートナーそれぞれとビジネスモデルを構築することに力を注ぎます。販売パートナーへの支援といえば、メーカー側がパートナープログラムを策定し、販売パートナーが参加するプログラムのレベルごとに対応するのが一般的です。もちろん、今後も製品ごとのパートナープログラムをブラッシュアップはしますが、それぞれの販売パートナーが売りやすいように技術支援を行いながら、ユーザー企業の経営課題を解決するソリューションを、販売パートナーとともに創造していきます。また、国によってITレベルは違いますが、日本はサービスの質に関して、ほかの国よりも期待値が高い。さらに、日本はシステムの安定性を理由としてメインフレームが多く残っている状況にある。一方、今に始まったことではありませんが、オープン化が進んでいます。メインフレームとオープン化を両立させて製品を投入していきます。
──ハードをもたないわけですから、さまざまなメーカーとの協業も考えなければなりません。 内藤 富士通やNECなど主要なサーバーメーカーとは、以前からアライアンスを組んで、どのメーカーともニュートラルな関係です。今後も、ニュートラルな関係と製品数を強みに、パートナーシップを深めていきます。
「縁の下の力持ち」という存在へ
──国内IT市場は、今後、大きく伸びることは見込めないというのが、さまざまな調査会社の見解ですが、どのように捉えていますか。 内藤 確かに、今後も微増でしょう。しかし、中身は異なってくる。ハードや維持費にかけるコストは減っていきますし、日本がグローバルで強くなるためには欧米とは異なるIT投資をしなければなりません。そのためには、ベンダー側が開発工数の変更やクラウド化を意識して、いかに低コストで提供できるかにかかってきます。当社は、開発工数を短縮する製品でプロジェクト&ポートフォリオ管理の「CA Clarity PPM」などをもっています。そういった意味では、IT業界の効率を高める製品も出しているということになります。
──クラウド関連も強化していくのですか。 内藤 「CA AppLogic」というクラウド仮想化プラットフォームを提供していますので、クラウド関連は強化すべき分野といえます。ただ、単にサービスを提供していくのではなく、どのように使うのかということをコンサルティングすることがクラウド関連では重要です。そのことを念頭に置いてサービスを提供していきます。
──業界でどのような存在になろうとしているのですか。 内藤 「縁の下の力持ち」ですかね。当社がアドバイザーになって販売パートナーをフォローし、ユーザー企業の悩みを解決する。そのような存在になることを目指します。
──売り上げなど目標はありますか。 内藤 大きく伸びることは確かです。そのポテンシャルは十分にあります。ただ、現在、計画中ですので、具体的には話せません。計画を策定し終わりましたら、必ずお伝えしますので、それまでお待ちください。
・FAVORITE TOOL バーレーンとオマーンで日本の伝統行事の流鏑馬を披露し、それぞれの国王から贈られた腕時計。「この時は、現地の馬に乗らなければならないので、調教から始めた」と振り返る。稽古では、どうしても馬が驚いてしまったという。「機動隊の馬を使って、ようやく成功した」そうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「成長に向けて、もっと変わらなければならない」と、製品ラインアップを増やす考えを示した内藤氏。ソフト特化のメーカーとして日本市場での存在感をさらに高めていくことと、「最新テクノロジーを駆使した当社の製品を日本市場に広めることができれば、ユーザー企業の経営課題の解決につながる」というのがその理由だ。さまざまなベンダーを渡り歩いた経験があり、人脈も豊富だ。そのスキルも生かして、CAをどのように変貌させるのかに期待がかかる。
以前、内藤氏がAPCジャパン(現・シュナイダーエレクトリック)の社長だった時、インタビューしたことがある。その時、また今回も改めて感じたのが、非常に「人」を大事にしているということ。魅力ある人材を理由にCAへ移ることを決心したとか、インタビュー中に「信頼」という言葉を何度も連発していたことなどからも、人を重んじる姿勢は変わっていないことに安心感を覚えた。気さくに話してくれることも変わっていなかった。うれしく感じた。(郁)
プロフィール
内藤 眞
内藤 眞(ないとう まこと)
1956年2月18日生まれ。78年3月、慶應義塾大学工学部卒業。ソニーやNTTコミュニケーションズ、日本IBMを経た後、アカマイ・テクノロジーや日本キャンドル、シュナイダーエレクトリックなどで社長を務める。デルでエリア・バイス・プレジデント兼ラージ・エンタープライズ・パブリック統括営業部統括本部長。2012年11月1日、CA Technologiesの社長に就任。
会社紹介
米国大手のソフトメーカー、コンピュータ・アソシエイツ(現・CA Technologies)の日本法人として1997年4月に設立。ITマネジメント、セキュリティ、プラットフォームなどの分野で製品・サービスを提供。買収を繰り返して製品数を多く抱え、メインフレームから分散、仮想化、クラウド環境までをカバーする。パートナー・エコシステムの構築などで、ビジネスの拡大を図る。