昨年度(2013年3月期)は減収減益と厳しい状況だったエレコム。しかし、葉田順治社長は「心配はしていない」と力強く言い切る。事実、今年度の業績は増収増益を見込んでいる。今年3月には東証1部に上場。海外への積極投資をはじめ、ストレージ分野で新製品、ネットワーク分野で新しいビジネスモデルの構築に乗り出している。「時代の流れに乗ったエレコムは、事業領域が拡大傾向にある」と自信をみせる葉田社長に、今後の戦略を聞いた。
東証1部上場の効果が現れた
──昨年度(13年3月期)を振り返ってみて、いかがでしたか。 葉田 一昨年(11年度)、HDD事業が非常によかった反動で、昨年度のこの分野の業績は減収減益となりましたが、それ以外の事業は伸びました。業績が下がったのはお恥ずかしい限りですが、事業が拡大するという方向性が固まっているので、さほど心配はしておりません。
──3月に東証1部上場を果たされましたしね。 葉田 私は、大学を卒業した時から、「上場会社をつくりたい」と考えていたので、東証1部に上場したことで、今はようやくスタートラインに立てたという気持ちでいっぱいです。
──変化した点はありますか。 葉田 いろいろとありますが、実感したことは、新卒採用の様子がまったく変わったということです。一流大学の学生が当社に入りたいとどんどん採用試験を受けにきている。これは、1部上場によって当社の知名度が上がった効果なのでしょう。今、在籍している社員の前では大きな声では言えませんが、これまではすごい学歴の人材が入ってきたという印象はありませんでした。でも、今の社員が優秀だからこそ1部上場会社になれたということだけは言わせてくださいね。これに一流大学で学んだ新人が入ってくると、当社のなかに今までとは違った雰囲気も出てくるのではないかと大いに期待しています。
──東証1部上場を果たして、その効果も出ている。まさに順風満帆のようですが……。 葉田 いえいえ、課題はたくさんあります。その一つは、開発力です。当社は国内と海外、さまざまな地域で事業を手がけていますが、世界で通用しているかといえば、そうではありません。誰もが驚く商品をもっと開発しなければならない。世界に通用する最先端の商品を開発して、市場に投入しなければならないということです。
──最先端の商品、ですか? 葉田 海外では、デザイン性や機能などが評価されて、ブルートゥース関連機器やヘッドホンなどが売れています。ただ、爆発的に売れているわけではありません。国内外を問わずに、思わず手に取って購入してしまうような商品を今後は出していきたい。
──具体的な製品の発売は決まっているのですか。 葉田 今はあまりくわしいことは言えないので申し訳ありませんが、今年の年末商戦に合わせてネットワーク関連で出したいな、とは考えています。また、これは将来への懸念材料になりますが、国内のスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスは需要が爆発的に増えている一方で、必ずどこかで頭打ちになる。このあたりも視界に入れておかなければなりません。
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