ボリュームのある法人ビジネスを強化
──組織再編や生産拠点にシフトなど抜本的な改革を進めたわけですが、ビジネス的には、今年度、伸ばそうとしている分野はありますか。 斉木 法人向け市場はまだまだボリュームがあるとみています。NASをはじめ、無線LANなど、当社の主力製品を拡販する余地は十分にあります。
──拡販するうえでの“武器”は? 斉木 2次店を支援するVARパートナープログラムです。現在、このプログラムに賛同してもらっている販売パートナーさんの数が3000社に達しています。これらパートナーさんに対して有益な情報の提供やビジネスプランの共有など、引き続き積極的に支援することで底上げを図っていきます。もちろん、1次店として2次店を取りまとめる大手ディストリビュータさんに対しても手厚く支援します。
──法人向け市場で力を入れる業界や地域、ユーザーの企業規模などはありますか。 斉木 全方位でビジネスを拡大したいので、とくに定めてはいないのですが、強いて挙げれば、政府がIT化に力を入れる学校などの教育機関ですね。小・中学校の無線LAN普及率はまだ20%といわれていて、IT化はこれからです。いくつかのプロジェクトが動き出す可能性が高いので、販売パートナーさんと手を携えて案件獲得に力を注ぎます。
──ストレージに関しては、大企業を攻めていた外資系メーカーが中小企業をユーザーとして獲得しようとしていますね。競合になりませんか。 斉木 データセンターでは激しくぶつかっている感はありますが、基本的には競合しているという意識はありませんね。中小企業といっても、攻めている企業規模が違うのでしょう。当社も対象ユーザーの企業規模をもう少し上のレンジまで上げようとしていますので、そうなれば競合する可能性はあります。とはいえ、当社の製品は価格面で優位性がありますので、十分に戦えると確信しています。余談になりますが、当社のNAS、実は米国のSOHO市場でのシェアが高いんですよ。サービス事業を中心に手がけるバッファロー・IT・ソリューションズをグループ会社として抱えているなど、外資系メーカーと違い、国内メーカーとしてのサポート体制は万全です。これに、VARパートナーを含めた総合力で、法人向け市場で十分に伸ばすことができると確信しています。
──今、米国の話が出ましたが、海外ビジネスはどのような状況なのですか。 斉木 実は、海外市場についてはローカライズという問題で苦戦していることは否めません。さまざまな国に進出して全方位で手を広げる計画だったのですが、いったん縮小します。米国と欧州、中国、日本とアジア諸国は、ビジネス領域として引き続き拡大を図っていきますが、それ以外は支店を廃止しました。これによって、好転しつつあります。
これまでにない新しい製品を投入
──昨年度は減収減益でしたね。とくに利益が大幅に落ち込んだようですが……。 斉木 パソコンや薄型テレビの落ち込みによって、国内のデジタル機器市場全体が停滞している状況にあって、周辺機器も厳しい状況に陥ったのです。ただ、スマートフォンやタブレット端末などは伸びていますので、伸びている製品をメインに周辺機器を市場に出していかなければなりません。その一環として、保護フィルムやバッテリなどを販売しているのですが、もっと幅を広げなければならないと痛感しています。
──ユーザーニーズは多様化していますので、さまざまな切り口で製品を出していかなければなりませんね。 斉木 その通りです。また、スマートフォンがパソコンに取って代わったとの見方がありますが、スマートフォンはフォトフレームのようなものだと個人的には考えています。例えば外出先で撮影したものを、その場で友人に見せたりしていますからね。そうした観点からは、自宅にデータを保管して外出先で共有するという用途を浸透させるべきだと実感しています。つまり、ネットワークとNASという当社の得意とする製品を使えば、スマートフォンをベースとするデジタルライフがいかに快適になるかを訴えていくことが重要です。
スマートフォンが伸びているので、当社もスマートフォンをベースとするビジネスの拡大を念頭に置きますが、AV(音響・映像)機器でも、もっと当社の製品を生かすことができるはず。薄型テレビは、大半の家庭が1台は置いています。その薄型テレビを有効活用できる製品を考えなければなりません。以前、インターネットテレビが話題になっていましたが、インターネットに対応していない薄型テレビを置いている家庭もあるはずです。それなら、インターネットに対応できる製品はどうか。また、当社の8チャンネルを同時に録画できるHDDレコーダー「ゼン録」を使って何かできることはないかなど、発想としては、いろいろとあります。今年の年末商戦に間に合うかどうかはわかりませんが、おもしろい製品を必ず出します。
・FAVORITE TOOL アルマーニのベルト。写真は買い替えたばかりの“2代目”で、「“初代”は10年間愛用した」という。ベルトの革にこだわりがあって、10年前に衝動買いで購入。「革が非常にいい。手入れ要らずという点も気に入っている」ということで、同じものを香港で見つけて買い替えたそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インタビューを開始した直後、何だか、いつもの元気がないなと感じた。昨年度の実績が厳しかったからなのかと思ったが、「いやあ、この後、経営会議が控えていてね」とひと言。きっと、そわそわしていたのだろう。インタビューをしているうちに、いつもの調子に戻った。そんな気ぜわしい日にもかかわらず取材に応じてもらえたことを、心から感謝したい。
昨年度が厳しい状況だったため、年度が終わりに差し掛かった今年2月に東京から名古屋に戻って、今年度の準備を整えた。そこで出した結論の一つが組織再編だ。「社員がやる気になって動き始めた」。以前の強いバッファローに戻ろうとしている。
開発組織がビジネスユニットを横串でみるようになり、「実は、私も開発のアイデアを出しているんだよ」。技術的なことはわからないという斉木社長のアイデアは難題ばかり。しかし、難題をクリアすれば、デジタル機器に詳しくないコンシューマユーザーが、ますます同社の製品を購入するようになる。斉木社長の技量に期待だ。(郁)
プロフィール
斉木 邦明
斉木 邦明(さいき くにあき)
1948年9月22日生まれ、愛知県出身。71年3月、愛知大学法経学部経済学科卒業。92年、メルコ(現バッファロー)に入社。96年6月、取締役。99年5月、常務取締役。00年5月、専務取締役。04年5月、取締役社長に就任。06年5月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。
会社紹介
バッファローの親会社であるメルコホールディングスの2012年度(13年3月期)の連結業績は、売上高1025億9700万円(前年度比12.5%減)と減収、最終利益が14億2500万円(67.9%減)と大幅な減益となった。主力市場と捉えていた薄型テレビの低迷によって、周辺機器メーカーのバッファローは大きな影響を被った。そこで今年度、組織を再編し、仕切り直しをした。