今年10月1日、サーバーやストレージなどのIBM製品の卸売りを行うVAD(Value Added Distributer=付加価値ディストリビュータ)の新しいプレーヤーが誕生した。トッパン エムアンドアイが、兼松エレクトロニクス、東京日産コンピュータシステムと一緒に立ち上げた合弁会社のグロスディーだ。グロスディーは、トッパン エムアンドアイが分社したVAD事業を引き継ぎ、兼松エレクトロニクスと東京日産コンピュータシステムの力を借りることによって、売り上げを現在の6倍に引き上げるとともに、収益の向上に取り組む。日本IBMが販売体制を大きく変えている状況にあって、今後、どんな動きをみせるのか。森田真也社長にたずねた。
ボリューム販売で利幅を拡大
──森田さんは、日本IBMで31年間のキャリアを積み、今年2月、トッパン エムアンドアイに入社して、グロスディーの立ち上げを率いてこられました。イグアスと日本情報通信(NI+C)に加えて、日本IBMの主要VADとして知られるトッパン エムアンドアイがIBM製品のVAD事業を分社してグロスディーを設立したわけですが、その背景と狙いを教えてください。 森田 トッパン エムアンドアイは、IBMのハードウェア製品をシステムインテグレータ(SIer)などに提供するVAD事業(間接販売)のほかに、トッパン エムアンドアイ自身がソリューションプロバイダになって、ITを直接販売するという二つの事業を手がけてきました。今回、VAD事業を分社化して、グロスディーを立ち上げたのは、間接販売と直接販売が競合し合うことを避けて、フェアな事業展開を保つことが目的です。
そして、もう一つあります。ご存じのように、ITのディストリビューションは、利益を捻出しにくいビジネスです。トッパン エムアンドアイの江口(昌幸)社長(グロスディーの会長を兼務)は、ここ数年、IBM製品のVAD事業は利益が低くなり、「事業を続けるべきか」と、悩んでいました。しかし、販売パートナーから、「ぜひ、継続してほしい」との強い要望を受けました。そんな状況にあって、どのようなかたちでIBM製品の卸販売を展開するかについて決断を迫られていました。
VAD事業の利幅を高めるカギになるのは、販売の規模を大きくして、ボリュームメリットによって収益率を高めることです。江口社長はそう判断して、単にVAD事業を分社化するのではなく、IBM製品のシステム構築に関して豊富な経験をもつ兼松エレクトロニクスと東京日産コンピュータシステムと組んで、彼らの技術リソースを有効活用することによって、VAD事業の幅を大きく広げる、という戦略を打ち出しました。
──そして、その戦略の実行を、日本IBMで企画管理やオペレーションに携わって、会社の運営能力が評価された森田さんに任せた、と。 森田 トッパン エムアンドアイに入社して、グロスディー設立の準備の指揮を執り、今年4月に3社で合弁会社をつくることの合意を取りつけました。5月から、毎週木曜日に兼松エレクトロニクスと東京日産コンピュータシステムのメンバーを入れた経営会議を開き、日本IBMとの話も進めつつ、10月の新会社設立にこぎ着けたのです。
[次のページ]