日本IBMのソリューションプロバイダであるトッパン エムアンドアイ(TMI)は、ここ数年間、主力事業であるハードウェアの販売が落ち込んでいた。2012年7月に就任した江口社長は、こうした状況に対処するため、新しいビジネスモデルを構築する取り組みに着手した。データセンター(DC)事業者と協業してユーザーのシステムをライフサイクル全体でカバーする「トータルマネージドサービス」と、クラウドソリューションを二本柱に据えて、サービス事業にシフトチェンジしていく構えだ。
ユーザーの機器をライフサイクル全体でカバー
──御社は、ビジネスモデルの変革を急いでおられるようですが、それはどのような方向なのでしょうか。 江口 これまでの主力事業は、IBM製ハードウェアの販売でした。しかし、機器販売は2007年を境に落ち込んで、ビジネスモデルが成り立たなくなりつつあります。そこで、現在はサービス事業にシフトしています。具体的には二つありまして、一つは、製品のライフサイクル全体をカバーするサービスです。お客様が導入された機器を、協業するパートナーのDCで預かって、そこで運用、保守、ヘルプデスクを含めたサービスを提供するものです。もう一つは、クラウドソリューションです。2年ほど前から提供していますが、これを強化していきたいと思っています。
──前者のサービスに呼称はありますか。 江口 「トータルマネージドサービス」とでもいいましょうか。今まさに着手したところなので、正確に名称を決めているわけではありません。
──その「トータルマネージドサービス」というサービスは、VAD(付加価値ディストリビュータ)など、IBMのビジネス・パートナーと協業して進めていくのですか。 江口 そうです。当社は、自前のDCをもっていませんので、パートナーを決めて、その企業が保有するDCを借りてお客様のシステムを運用するかたちになります。ただし、それはアウトソーシングサービスではありません。アウトソーシングは、ハードウェアをすべて引き取って、いかに早く減価償却してシステムを長く使い続けるかというサービスです。それに対して、当社では、システムをお預かりして、安く効率的に運用するというサービスをしたいと考えています。実は、アウトソーシングサービスにも限界がきていましてね。結局、長期契約になってしまうので、お客様になかなか新たなシステムの提案ができない。それだけではなく、営業やシステムエンジニア(SE)の力が落ちてしまう懸念があるのです。
──「トータルマネージドサービス」を低料金で提供できるのはなぜですか。 江口 DCが増えて、だんだん飽和状態になってきているからです。特定のパートナーと戦略的にラックなどのインフラを借りる契約をすれば、かなり安くできます。また、運用を一つひとつオンサイトでやるのではなくて、機器を全部集めて、同じOSやミドルウェアのバージョンに合わせていけば、保守を同じパターンで提供できるのです。運用、保守、ヘルプデスクの各サービスをパッケージ化するので、単価が下がります。
──同じようなサービスに取り組んでいるIBMのビジネス・パートナーは、御社のほかにもあるのですか。 江口 ストックビジネスとしてのチャンスはありますから、当社と同じことを考えている企業は多いでしょう。ただ、システムインテグレータ(SIer)で自前のDCをもっている企業は、競合というよりもむしろ当社と補完関係にあります。彼らはバックアップやセキュリティなどに強くて、当社はインフラの構築に強い。それをうまく組み合わせていくことが重要になります。
ですので、当社が保有する垂直統合型システム「PureSystems」をそうしたパートナーのDCに持ち込んで、クラウド環境を実装して、お客様に提供していくことも考えています。
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