データセンター(DC)大手のビットアイルは、緻密で計画的な投資によって着実に収益を拡大している。DCビジネスは「ラック」、すなわち“箱売り”が基本になるだけに、大手ITベンダーでさえ差異化が難しいといわれる。そうしたなかでも、DC建設にかかる先行投資と販売力をうまくバランスさせることで競争力を最大化。これにより、さらなる販売増につなげる好循環をつくり出している。2014年11月には、既存の第4DCと隣接する場所に最新鋭の第5DCを竣工する。第4と第5を合わせた規模はラック換算ベースで4000ラック相当となり、都内で最大級を誇る。寺田航平社長兼CEOにその成長戦略を聞いた。
クラウドでも“箱”が不可欠
──熾烈な競争状態にあるDCビジネスで、着実に売り上げと利益を伸ばしておられます。業績を高める秘訣を教えてください。 寺田 クラウド時代になった現在でも、ITサービスを提供するには、必ず“箱”が要ります。自身の販売力に見合った箱を用意し、稼働率を高めることで利益を出す。DC事業者間の競争は激しさを増していますが、それでも売り上げを伸ばし、利益を出すことができているのは、このDC事業者としての基本をしっかり押さえているからです。ライバルとの関係でも、ある種の棲み分けというか、一定のポジションを確保してきたことが有利に働いているのではないでしょうか。
──増収増益を続け、今年7月にはJASDAQから東証1部へと昇格されました。2014年11月をめどに約100億円を投じてラック換算で1400ラック相当の最新鋭の「第5DC」を都内に竣工されるとうかがっています。売れる見込みはあるのですか。 寺田 もちろんあるからつくるわけで、ほぼ計画通りですよ。要は一つのDCをつくって、仮に減価償却期間を5年とするならば、それまでにフル稼働状態にもっていくだけの販売力との見合いで収益は決まるのです。極端な話、100ラックのDCを5年かけて売るとすれば、年間20ラック売れるだけの販売力があればいい。
しかし、100ラック程度では小さすぎて規模のメリットがまったく出てきません。価格を含めた総合的な競争力が高まらないので、ライバルとの競争上、極めて不利になってしまいます。経験的にいえば、国内市場で最低限の競争力を確保するには、およそ2000ラック相当の規模が必要です。となると、年間400ラックを販売する能力が求められることになり、逆をいえば、これだけ売れば競争力を発揮でき、確実に収益が得られるということなのです。当社はそうやって成長してきました。
──新設する予定の第5DCは1400ラック相当だそうですが、規模的に小さくないですか。 寺田 いえ、第5DCはラック換算で約2400ラック相当の第4DCに隣接して建設中ですので、この二つを合わせると約3800ラック相当の規模になります。都市型DCで4000ラック相当に近い大規模DCを運用している同業者は、かなり限られます。これとは別の地区に第1から第3までのDCを置いていますが、こちらもDCをラック換算すると約3700ラック相当となり、規模のメリットを十分に生かしてきたと自負しています。
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