パブリッククラウド世界大手のAmazon Web Services(AWS)は、SIerやISV(ソフト開発会社)との連携を急速に進めている。日本法人のアマゾン データ サービス ジャパンは、この6月、国内で初めての「プレミアコンサルティングパートナー」を2社選出した。これまで世界には15社のプレミアパートナーが存在したが、日本から野村総合研究所(NRI)とアイレットの2社が加わったことで計17社となった。この企業規模が大きく異なるSIer2社を選出した背景や狙いはどこにあるのか。AWSのビジネスパートナー戦略を長崎忠雄社長に聞いた。
転換期のビジネスチャンスをつかめ
──ようやく日本からもAWS最上位のビジネスパートナー「プレミアコンサルティングパートナー」が選出されるようになりました。AWSが日本の情報サービス業界に根づいてきたということでしょうか。 長崎 私がトップに就いた2年前は、日本でのスタッフ数も限られていたこともあって、ビジネスパートナーや顧客とのコミュニケーションが不十分な状態でした。当初から「AWSって何だ?」という問い合わせや引き合いはとても多かったのですが、すべてに対応できず、結果として先行する欧米やインドのビジネスパートナーとの関係構築が目立つ状況でした。しかし、ここにきて日本でのAWSの存在感を高めることができているという手応えを感じています。
ご指摘の「プレミアコンサルティングパートナー」には、この6月に野村総合研究所とアイレットの2社になっていただきました。これまでは欧米やインドなど、15社のプレミアパートナーに、日本の2社が加わっていただいたことで、直近では計17社となります。念のために申し上げますが、主にSIerの方々になっていただくコンサルティングパートナーは、「プレミア」のほかにも「アドバンスト」「スタンダード」などのクラスがあって、ISVの方々には「テクノロジーパートナー」になっていただいています。日本の主要なSIerやISVのみなさんに加わっていただいていますので、プレミアでないとダメとかいうわけでは決してありません。誤解のないようにお願いします。
──もちろんそうですが、世界17社のプレミアパートナーをみると、AWSの特性のようなものが浮かび上がってきます。例えば今回のNRIとアイレットの2社は、会社の規模がまったく違いますね。プレミアパートナー発表のすぐ後にアイレットの齋藤将平社長にインタビューさせていただいたところ、ずいぶん喜んでおられました。 長崎 それはAWSの発展の経緯と深く関係があります。AWSは従来のITシステムの延長線上にあるのではなく、クラウドという新しい流れを起こしてきました。
多くのユーザーがクラウドを優先的に採用する「クラウドファースト」の考えに切り替え始めていて、従来のハードウェアを客先に設置するオンプレミス型とは一線を画しています。こうした転換期は大きなビジネスチャンスであって、アイレットのようにチャンスをものにして急成長するSIerが世界的に増えているのです。
つまり、「これまでできなかったことが、できるようになる」という変革期において、共にビジネスを創造する意欲、情熱があるパートナーを、企業規模に関係なくAWSのパートナーになっていただきたいと考えているのです。
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