ロビーや廊下で社員と気軽に挨拶を交わす中山一郎さん。今年4月にIDCフロンティアの新社長に就任した。経理部門でキャリアをスタートし、ビジネス開発本部長としてクラウド事業の立ち上げを率いた経歴をもって、現場に深く根づいている人物だ。社長としてのミッションは、データセンターとクラウドに加え、ビジネスの三本目の柱として、データ分析サービスの事業を設立すること。現在、サービスを開発中で、年内に提供を開始することを目指している。
焦らないことを胆に銘じて
──今年4月に、IDCフロンティアの社長に就任されました。会社のトップになって、ここ数か月、どのような活動をしてこられたかについて聞かせてください。 中山 最初の3か月に戦略を練って、7月から具体的な動きに出ています。最初に取り組んだのは、組織の再編です。会社というのは、どうしても縦割り組織になりがちなので、私は本部長時代から社員に対して「ワンチーム」の重要性を訴え続けてきました。
今回、7月1日付で、これまで別々だったデータセンター(DC)部門とクラウド部門を統合しました。当社は、DC事業者でもなく、クラウドベンダーでもない、お客様のビジネスを伸ばすためのITインフラを提供する企業だと考えています。お客様は、最適なITインフラを迅速に提供してもらいたいのであって、ベンダー側の組織は関係ないわけです。だから、DCの部隊とクラウドの部隊が一体になって、お客様が求めるソリューションを横断的に提供することができる体制をつくりました。
さらに、技術開発本部のなかに、研究開発を手がけるR&D室を新設しました。これを中心に据えて、常に技術を進化させ、当社サービスの独自性を磨きます。
──DC/クラウドの業界は、国産・外資系ともにベンダーがひしめいていて、競争が激しくなっています。中山さんは、新組織でスピードと効率性を重視して、他社との差異化を図ろうとしておられるのですか。 中山 もちろん、スピードと効率性は欠かせませんが、ここ数か月を反省し、焦らないことを胆に銘じて、方針に掲げている「真価」に慎重に取り組むことを心がけています。
社長になって、親会社や周りの社員から「会社を新しくする若手社長」として強い期待を寄せられていることをひしひしと感じて、肩に力が入ってしまいました。DC/クラウドを商材として、お客様のシステムを預かる当社のビジネスでは、お客様の信頼を得ることが一番重要です。しかし、肩に力を入れて焦って行動すると、信頼を得ることなどできません。だから、スピードを重視しながらも、焦らずに動きたいと思います。
──御社はヤフーのグループ会社ということもあって、売り上げを公開していません。御社のビジネスの規模について、ちょっとしたヒントでもいただけないでしょうか。 中山 数字を公開することができないのは申し訳ありませんが、ここ数年、お客様の数や売り上げの規模は著しく伸びています。お客様は、ヤフーという親会社の名前が頼もしく響くこともあって、当社に対して高い期待をもっておられる。私どもはそれに応えなければなりません。そのプレッシャーが原動力になって、売り上げの拡大を後押ししています。
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