日商エレクトロニクスグループでクラウドサービス事業を展開するエヌシーアイの橋本晃秀社長は、クラウドに付加価値をつけることによって、インフラ提供に特化したビジネスモデルを採用しているIaaSベンダーとの差異化を明確にしようとしている。橋本社長は就任からのおよそ1年半、現場に足を運んで課題を把握したり、業績の数字を社員と共有したりと、要職を務めてきた外資系ベンダーらしいマネジメントを貫き、著しいビジネス成長に結びつけている。橋本社長に、事業戦略についてたずねた。
石狩DCを任されて、サービスを伸ばす
──橋本社長は、先週、北海道・石狩に出張してこられたばかりとうかがっています。 橋本 当社が石狩で運営しているデータセンター(DC)に月一回のペースで足を運んで、システム運用に携わっている技術者を中心とする約10人のスタッフと情報交換をしています。本社とDCが物理的に離れていると、どうしても情報のギャップによる温度差が生じると思います。レガシーな方法と思われるかもしれませんが、私はこうして現場を訪問し、エンジニアから課題を聞いてその場で解決に向けた指示を出すのは、いくら「場所を問わないコミュニケーション手段」が発達したとしても、社員の力を引き出すには欠かせないことだと確信しています。
──今回の訪問では、どんな会話を交わされましたか。 橋本 当社のエンジニアと話したほかに、石狩市の田岡(克介)市長とお会いしました。話の内容はお話しできませんが、DCだけでなく、あらゆる企業を誘致して石狩の経済を活性化したいという市長の熱意を感じました。当社も、石狩DCをしっかり活用して、現地の発展に貢献したいと考えています。
──その石狩DCですが、あらためて確認させてください。さくらインターネットが建物を建設してDCを立ち上げて、センターの一部を、同じ双日グループに属する日商エレクトロニクス(日商エレ)に提供した。そして、日商エレの部分を御社が活用して、DC/クラウドサービスを展開している、という構造ですね。 橋本 そうです。もともと、サーバー運用・監視事業のインフォリスクマネージを日商エレが子会社化して現在のエヌシーアイとして再スタートさせたのは、傘下に収めた当社に、石狩DCのなかで日商エレが構築しているエンタープライズ向けクラウド環境の運用を任せることが目的でした。
日商エレは、ここにきてビジネスの中核であるサーバーやスイッチの販売・構築に集中するために、それらに紐づくサービスの提供をすべて当社に移管することを進めています。実は、この3月をもって、これまで日商エレの財産だった石狩DCの資源を全部こちらに移管します。それによって、(さくらインターネットが運営する部分を除いた)石狩DCは、4月から完全にエヌシーアイの財産になるわけです。
たとえてみれば、当社はようやく賃貸の部屋を出てマイホームを手に入れ、ちゃんとした「大人」になるということですね。
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