会計システムベンダーのfreeeは、全自動帳簿作成機能をもつクラウド会計システム「freee」を世に出して、時代の寵児となりつつある。昨年3月のリリース以降、ビジネス向け商材としては驚異的な勢いでユーザー数を増やしている。スモールビジネスを対象に5年で100万ユーザーを獲得するという目標を掲げているが、この数字は、会計分野のトップベンダーである弥生が現在抱える顧客数と同じ水準だ。佐々木大輔 代表取締役に、「freee」の手応えと企業のビジョンをうかがった。
XPのサポート終了と消費税改正の特需で急伸
──昨年8月に有料化のサービスをスタートされました。ユーザー数の伸びとマネタイズの進捗はどんな様子ですか。佐々木 2月半ばの時点で、4万ユーザーを超えました。とくに年が明けてからの伸びは大きく、今年1月の実績は、昨年12月比で、日々の登録数が2.5倍、無料プランから有料プランへの移行も3倍くらいの水準になりました。確定申告のシーズンであることと、4月の消費税改正やWindows XPのサポート切れを前にした会計システムのリプレース需要が大きいと分析しています。また、スタートアップ企業などが新たに会計システムを導入する際に、今後のことを考えるとクラウドにすべきだと考えて「freee」を導入するケースも多いようです。サービス開始から1年を迎える3月末には、5万~6万ユーザーに到達しそうです。計画通りに順調に伸びている手応えがあります。
──料金プランは個人事業主、法人の2種類で、3か月だけデータを残すことができる無料プランもありますが、全ユーザー数に占めるそれぞれの割合はどの程度なのでしょうか。佐々木 有料ユーザーの具体的な数は公開できませんが、満足できる数字で推移しているといえます。昨年10月に消費税改正の正式なアナウンスがあったことをきっかけに、急激に有料ユーザーが増えました。個人事業主と法人の割合は2対1というところで、いずれも大きく伸びています。
──「freee」は、クラウドサービスであることはもちろん、金融機関やクレジットカードのウェブ明細から入出金データを自動で取り込んで会計帳簿を作成する「自動化機能」もユニークです。既存の会計ソフトユーザーが「freee」に乗り換える理由を、どのように分析しておられますか。佐々木 三つあると思っています。まず、クラウドネイティブであること。そして二つ目は、簡単なインターフェースであることです。「freee」の特徴の一つとして、インターフェースには簿記用語を一切使っていません。例えば、「貸方」「借方」は「収入」「支出」といった言葉にして、経理担当者でなくても直感的に使ってもらえるように工夫しています。システム自体は、複式簿記の要件を満たすように動いています。ですから、自動同期を使わずに、簡単に入力できる会計ツールとして使っているユーザーもかなりいます。
とはいっても、やはり、会計帳簿を全自動で作成できるというのは大きくて、これが三つ目のファクターになっています。仕訳も推測機能を使って自動で行います。最初は推測の精度も100%ではなく、ユーザーに修正してもらう必要がありますが、それを「freee」が学習していくので、そのプロセスは使ううちに省略されます。メリットを実感したユーザーが、Twitterなどで評価してくれるコメントを多数発信してくれています。
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