中国の情報サービス業界で、新しい全国規模の業界団体が発足しようとしている。そのカギを握る一人が北京服務外包企業協会(BASS=北京サービス・アウトソーシング企業協会)の鐘明博理事長だ。今年下期(2014年7・12月)をめどに民間主導のサービス・アウトソーシング業界団体「中国服務外包協会(仮称)」を設立する準備を進めており、これに先だって、13年11月に連合会方式の「中国信息技術服務与外包産業連盟(CITSA)」を設立。今年3月、CITSAは対日オフショアソフト開発の振興を担う分科会も開設し、鐘理事長自身が分科会長に就任している。日本の情報サービス業界との関わりを中心に話を聞いた。
全国規模の業界団体を立ち上げ
──北京服務外包企業協会(BASS)は、中国のサービス・アウトソーシング業界を代表する業界団体の設立に向けて、さまざまな働きかけをしておられます。まずは、その取り組みについてお話しいただけますか。 鐘 中国の「服務外包=サービス・アウトソーシング」は、日本の「情報サービス」の範疇とほぼ重なります。ユーザーの経営課題をITを活用して解決するソリューションプロバイダの役割を担ったり、ソフトウェアやシステムの開発を請け負ったり、元請けの同業他社からソフト開発を受託したりするといった、いわゆる日本でいう情報サービス業界なのですが、残念ながら、これまで全国規模で活動できる業界団体がありませんでした。
中国のサービス・アウトソーシングがもっと発展していくためには、中国政府からの協力や理解、外国の業界団体との連携が不可欠です。そこで2014年下半期(7・12月)をめどに、われわれBASSも加わるかたちで、中国各地のサービス・アウトソーシング団体・企業と協力して「中国服務外包協会=中国サービス・アウトソーシング協会(仮称)」の設立に向けて準備を進めている最中なのです。
──日本の情報サービス業界とは、どのような関わりになるのでしょうか。 鐘 ご存じの通り、日本のオフショアソフト開発の約8割はわが国が受注していて、われわれサービス・アウトソーシング企業も、「対日オフショア開発パートナー」として深い関わりをもっています。私たちは、先に述べた「中国服務外包協会」の設立に向けた前段階として、2013年11月、中国のサービス・アウトソーシング業界で初めての全国的な連合会「中国信息技術服務与外包産業連盟(CITSA)」を設立しているのですが、ここには、およそ3000のサービス・アウトソーシング関連団体・企業が参加しています。そして今年3月、CITSAの活動の一環として対日ビジネスを専門とする分科会を開設しました。この分科会には全体の1割に相当する300団体・企業が関わっています。
対日オフショア開発は、中国の人件費高騰や為替リスク、日本国内市場の成熟に伴う発注量の伸び悩みなど、さまざまな課題を抱えています。また、日系SIerの中国市場への進出意欲の高まりや、中国のSIer自身も中国市場重視の傾向がみられるなど、中国と日本のITサービス業を取り巻く環境は大きく変化しています。分科会ではこうした課題や変化適応に向けて、中日双方で知恵を出し合う場にしたいと考えています。
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