東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は、今年4月、東京証券取引所市場第1部への株式上場を果たした。日本初のSAPパートナーであり、国内SIerのなかでは、ERPビジネスの先駆企業となった。また、製造業向けの生産・販売・原価管理機能を提供する自社開発のERP「MCFrame」や海外対応会計パッケージ「A.S.I.A.」のソフトウェアベンダーとしても、存在感を高めている。外資系ベンダーの活躍が目立つERP市場で独自の地位を確立しつつある同社を率いて6年。石田壽典社長は、東証1部上場の先に何を見据えているのか。
2部上場から最短で1部上場を果たす
──4月4日に東証1部に上場されました。昨年同日の東証2部上場から一年という最短での1部指定になったわけですが、その目的は何でしょうか。 石田 最大のポイントは、月並みですが、お客様に信頼される会社にしたかったということです。当社が扱う基幹業務システムは、企業の業務を背後から支えるものなので、一度導入していただいたら10年から20年ほど使っていただく製品です。お客様からみれば、当社が安定的に長くつき合えるビジネスパートナーかどうかが一番気になるところです。東証1部上場となれば、安心感をもっていただく効果はあると思っています。
もともと上場しようという心づもりはありましたので、社内規程などいろいろなルールはきちんと整備してきましたが、本格的な準備は、2部上場の一年ほど前から進めてきました。足かけ3年間の準備がようやく実を結んで、ひと安心しているところです。
──2014年3月期の決算は、売上高が前期比10.9%増の126億3500万円となり、増収増益を達成されました。とくに、自社パッケージである「MCFrame」や「A.S.I.A.」のライセンス販売などを手がけるプロダクト事業は、売上高が前期比17.2%増と好調ですね。これからはプロダクト事業に主軸を移していかれるのでしょうか。 石田 それはニュアンスが違います。確かに、「MCFrame」のライセンス販売の売り上げは、リーマン・ショック以降、2ケタ成長を続けています。一方で、SAPやオラクルの製品を扱うSI事業であるソリューション事業は、2014年3月期で売上高が80億円を超えています。大企業の顧客が多いので、トレンドとしては横這いから数%増の状況ではあるけれど、堅調に推移していて、非常に重要な経営基盤であることに変わりはありません。
──クラウドの流れは基幹系のシステムにも及んでおり、B-EN-Gも自社パッケージではクラウド対応を進めていますね。ソリューション事業も含めて、このトレンドが経営に与える影響をどうみますか。 石田 SAPもオラクルも、クラウドへのシフトを鮮明にしていますし、ソリューション事業でもクラウド化を進めることになるのは間違いないでしょう。ただし、ライセンス販売にしろSIにしろ、クラウド化により短期的に収入減の傾向に陥るのは確実です。その備えとしては、とにかく顧客の数を増やし、複数の案件を同時に立ち上げる努力をすることが重要になると考えています。
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