DNPの柏DCを運用し、サービスを伸ばす
──ネットマークスを吸収し、従業員の数が約3200人に増えました。入部社長は、その巨大な組織をどう束ねて、一体感の強化を図っているのですか。 入部 新年度のメッセージとして社員に発信したのは、早めに早めに動くことの大切さです。4月に、旧ネットマークスの社員を中心に、約1000人のメンバーを集めたイベントを都内のホテルで開き、私は『ちゃんと(統合による)結果を出そう』ということを促しました。
──親会社の日本ユニシスの従業員は、約3700人です。「ヒト」と「カネ」に関して、御社は親会社と肩を並べる規模になりました。日本ユニシスグループで、新生ユニアデックスの存在感は非常に強くなったのではないかと思うのですが……。 入部 私が社長に就任してから、当社は売り上げと利益の目標を毎期、達成しています。この実績があって初めて、親会社にグループの“強い”一員として認められているわけです。
ここ数年は、一社の通信キャリアに食い込めたこともあり、相当なボリュームでビジネス規模を伸ばしました。しかし、売上比率では、いまだにモノの販売が大きなウエートを占め、将来の柱として伸ばすべき保守サービスが減少傾向にあります。幸いにも、今ではリカバリの兆しがみえてきていて、例えば、(日本ユニシスの筆頭株主である)大日本印刷(DNP)が昨年に開設した「DNP柏データセンター(DC)」の運用を当社に任せてもらい、運用・管理サービスの領域が徐々に拡大しているところです。
今後は、旧ネットマークスのお客様への提案活動に注力し、サービスをさらに伸ばしたいと考えています。
──旧ネットマークスのお客様は、通信キャリアというよりも、一般企業が多いと思います。彼らにどんな提案をしていきますか。 入部 一つ、提案で注力しているのは、サーバーの統合やプライベートクラウドの構築によって、お客様のビジネス改善に貢献するという切り口の案件です。旧ネットマークスは、ユニファイド・コミュニケーション(UC)の構築が得意なので、インフラとUCをセットで提案することにも力を入れています。統合からまだ4か月余しか経っていないので、現時点で、新しい提案活動がうまくいっているとはいえませんが、受注した案件も出てきていることから、手応えは確実に感じています。
通信キャリアにさらに食い込む
──統合前のユニアデックスと、少し“ベンチャー企業っぽさ”がある旧ネットマークスでは、企業文化で違うところがあると思います。一緒になっての提案では、進め方に摩擦はないのでしょうか。 入部 案件を獲ってきた営業担当が技術部隊に開発を依頼するときのやり方について、違いがあるのは確かです。ユニアデックスでは、提案のプロセスを明文化し、どの段階で誰がかかわるかをはっきり定めています。これに対し、迅速な対応を心がけている旧ネットマークスの営業担当には、一人ですべてを仕切るというマインドが深く根づいています。私は、両方のやり方に利点があると捉えているので、案件の中身によって、どれを取るかを柔軟に決めたいと考えています。
ご存じのように、日本ユニシスグループでは、不採算案件を防ぐためのリスク管理の徹底に取り組んでおり、そのため、プロセスの明文化は欠かせません。しかし、お客様のニーズが多様化している時代には、多少のリスクを負わなければ、ビジネスチャンスを逃しかねない。そんな状況にあって、利益が出ることが前提になりますが、旧ネットマークスの提案の進め方についても前向きに取り組みたい。
──事業目標についてお聞かせください。 入部 これからの3年間で、売上高を200億円以上伸ばし、1500億円の目標を達成することを目指していきます。営業利益は将来、5%までに引き上げたいと考えていますが、現在は3%あるかないかのレベルなので、いきなりは無理でしょう。せっかく通信キャリアに食い込むことができたので、ほかのキャリアも攻めて実績をつくっていきたい。実は、旧ネットマークスも、キャリア向けの仕事を手がけていたので、この分野で相乗効果を発揮することに大いに期待しています。
──最後に、2020年の東京五輪によるITの特需を含めて、国内のIT市場の可能性をどうみておられるかを教えてください。 入部 東京五輪では、チケットの販売・購買などにおいて、これまで紙を使っていたところがスマートフォンに代わるようになり、サーバーや無線LANをはじめ、バックで動くインフラに対するニーズが確実に出てくるとにらんでいます。また、地方の病院や学校はICT化が遅れているので、こちらの領域でも商機が多いでしょう。
当社にとっては、販売した後のサービス提供がキモになるので、サービスをしっかり提案して、お客様に「全部、お任せします」と言われる会社にしていきたいと考えています。

‘ネットワーク構築だけでは、利益を捻出しにくい。ネットワークにサーバーやストレージを合わせ、システムを統合的に提供していきたい’<“KEY PERSON”の愛用品>「CASIO」の電卓 電卓は、親会社の日本ユニシスで、長年システム開発に携わり、複雑な数式などを駆使してきた入部泰社長にとって、思い出深いツールだ。25年ほど前に手に入れたもので、現場時代の記念品として大切に保管している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
技術出身の入部泰社長は、定期的に開発現場を回り、エンジニアの近況を聞く。「仕事量が多くて休みが取れない」といった声を吸収し、改善策を打つという活動に力を入れている。IT企業は、エンジニアが財産で、彼らがいかにモチベーションを高めて開発作業を迅速かつ正確に行うかが、業績に直結する。
入部社長は、1974年に日本ユニバック(現日本ユニシス)に入り、日本ユニシスの黒川茂社長との同期入社だ。二人とも、技術畑を歩んできたためか、大手企業の経営者として堅実で真面目な印象を受ける。しかし、謙虚な姿勢の裏には、日本ユニシスグループを新たな時代に導く強い決意がうかがえる。喫緊の課題は、サービス事業の強化。入部社長は、「まだモノ売りが多い」ことが課題だという。
ネットマークスの統合によって、日本ユニシスとほぼ同規模になったユニアデックス。親会社と協調しつつも、いかにサービス事業を伸ばしていくかが、入部社長の腕のみせどころとなりそうだ。(独)
プロフィール
入部 泰
入部 泰(いりべ やすし)
1949年7月17日、大阪府生まれ。74年、日本ユニバック(現日本ユニシス)に入社。94年、同社システム技術本部システム企画開発2部長。96年、同社システム技術部システム運用ソフトウェア開発室長。04年、ユニアデックス常務執行役員ソフトウェアサービス事業グループ長。06年、常務執行役員事業推進グループ長。07年、常務執行役員ソフトウェアサービス事業グループ長。10年4月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
日本ユニシスグループのシステムインテグレータ(SIer)。ハードウェア/ソフトウェアの販売のほかに、保守サービスを提供する。設立は1997年。2014年3月、日本ユニシスグループのネットワークインテグレータ(NIer)であるネットマークスを吸収・統合し、新生ユニアデックスとして新たなスタートを切った。ITとネットワークを統合的に提案することを目指す。ネットマークスを統合後の従業員数は、約3200人。売上高は、日本ユニシスの2014年3月期の連結売上高である2827億円の半分弱を占める。東京・豊洲に本社を置く。