NECグループのなかで中国本土と香港、台湾市場を担当するNEC(中国)は、中華圏のグループ会社を統括している。そのトップを務めているのが日下清文総裁だ。開拓が難しい中国の市場で、海外事業に精通する日下総裁がぶち上げた目標は、売上高1000億円。他社の追随を許さない技術分野を確立し、ローカル(中国資本)企業とのパートナーシップを構築して、売り上げのほぼすべてをローカル市場から得るという戦略で臨む。
世界一の顔認証技術、政府機関で続々採用
──2013年4月に総裁に就任されて今年は2年目。年末までには少し間がありますが、今年を振り返って、ビッグなニュースを披露してください。 日下 NEC(中国)は、「安心・安全(セキュリティ)」「健康(ヘルスケア)」「環境(エネルギー)」関連事業にフォーカスしています。そのなかで、とくにセキュリティビジネスが成長したことが最大のトピックスでした。
中国の政府機関・企業は、今、セキュリティ対策への関心を高めています。そのトレンドを感じて、2013年11月にセキュリティ事業などの推進組織「リージョナル・コンピテンス・センター(RCC)」を北京に設置しました。以前、東南アジア市場を担当していたとき、シンガポールにRCCをつくって成功した経験があるので、それを中国にも持ち込もうと考えたのです。セキュリティへの潜在ニーズが顕在化してきたことや、当社の技術力に対する評価が高まったことで、予想以上に伸びました。
──ひと口にセキュリティといっても、ジャンルはさまざまですね。 日下 特筆すべきは顔認証です。2013年秋に発売した顔認証エンジン「NeoFace」の売れ行きがとくにいい。生体認証は種類がいろいろあって、シンガポールでは指紋認証を求める声が多かったのですが、中国では顔。顔の識別を用いた認証の受けがいい。NECの顔認証技術は世界に認められていて、米国の「国立標準技術研究所(NIST)」が実施した顔認証技術ベンチマークテストで、3回連続でNo.1を獲得しました。性能が高く評価されて、1万ライセンス近くのボリュームで導入が進んでいます。顔認証は、空港での出入国管理からオフィスでの入退室管理、PCのアクセス管理まで用途は幅広く、今後も需要が見込めます。
──NEC(中国)のビジネスのうち、昨年度の実績で60%程度が日系企業向けだったと記憶していますが、顔認証の売り先も日系が多いのですか。 日下 いいえ。90%以上が中国の政府機関です。
──外資系のNECが政府機関に? 日下 そうです。ただ、私たちが直接、政府機関に納入しているわけではありません。協力関係にあるローカル(中国資本)のSIerや、カメラメーカーに当社の製品や技術を納め、その協力企業が政府機関に納入する。私たちは表には出ません。
──やはり、直接は難しいのですか。 日下 難しい……。可能であればもちろん政府機関と直接取引したいですが、外資系は難しい。政府機関としても、日系企業の製品を使っているとは表だって言いづらいところがあるのでしょう。なので、政府機関向けのビジネスで私たちは、今の立ち位置を変えるつもりはありません。裏方に徹します。提供する製品・技術を増やし、提供する協力企業も増強していくことで、ビジネスを伸ばしていくのが基本戦略です。
──ヘルスケア分野で、日本で未発売の簡易糖質計「健糖宝」(仮称)を発表したことが、NEC(中国)の今年一番のニュースだとみました。NECのイメージとは、かけ離れた商品なので。 日下 NECのヘルスケア関連技術は強いですよ。糖質計は中国で最初に発表しましたが、ほかにも、日本では血管に圧迫を加えることなく血圧を測定できる「低負荷血圧測定技術」を発表しています。中国の健康マーケットは巨大ですから、ニーズがあるものは日本よりも優先的にチャレンジしたい。糖質計と血圧計は、来年中ごろにコンシューマ向けに発売する予定です。少なくとも年間5万台は売りたいですね。
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