地域に密着したITベンダーのロールモデルに

──MBAで学んだ成果は、その後、生かされましたか。

村竹　具体的にどうかといえば難しいのですが、少なくともこれまで漠然と捉えていた事象を、体系立てて考えられるようになったのは大きいと感じています。組織の力を生かすには、どうすればいいのかという点で学ぶところが多かったですね。

──もう少し具体的にお話しいただけますか。

村竹　うまいたとえになっているかどうかわかりませんが、一例を挙げましょう。当社ユーザーのウェブサイトの負荷がある日、急に高まりました。もっと正確にいえば、ネットで何らかの非難や賛同が入り乱れる、“炎上”といわれる現象が起きて、当社の担当エンジニアが裏方でサーバーを継ぎ足していたことがあります。放置すればサーバーは確実に落ちるし、ユーザーに事前に注意を促そうにも、こうした状況下では、恐らくユーザーはそれどころではないはず。であるならば、こちらで対策を打っておこうという判断なのですが、日々の運用の一環として人知れず、こうした措置をとることがあります。

　エンジニアには、サーバーをできる限り落とさないようにするという目標があり、誰がリーダーシップをとるわけでなくとも、自然発生的に組織が動いていく。自社内をよく観察すると、何というか、“仕事が仕事でなくなる一瞬”みたいなものがしっかりあるんですね。与えられた役割を忠実にこなすだけでなく、咄嗟の出来事や急激な変化が起こったときに、皆が当事者となって役割を見直し、自発的に変化に適応していくという性質のものです。こうした体制をもっと新サービスや新事業に投入できれば、ビジネスを伸ばせると考えています。

──御社は大阪に拠点を構えておられますが、地域性やビジネスパートナーについてはどのようにみておられますか。

村竹　インターネット草創期に大阪で創業し、これまでも地場に根ざしたIT系のコミュニティなどに参加し、一定の支持をいただいてきました。今後は、例えば広島や福岡などの地域に密着したITベンダーのロールモデルになったり、大阪で培ったノウハウを他の地域へ展開することで、それぞれの地域のユーザーやビジネスパートナーとの関係をより深くしていきたい。今回、レンタルサーバーから全面刷新した「Zenlogic」では、ビジネスパートナーがもつ商材との連携も積極的に進めていき、パートナーとの協業モデルを拡大していく計画も進めています。「Zenlogic」はこれで完成ではなく、ユーザーやパートナーの声に耳を傾けながら、中小企業ユーザーにとって、より簡単で、より手軽に使えるように改善を重ねていきます。

眼光紙背 ～取材を終えて～