本当に大事な基幹業務システムは、信頼できるSIerにしか任せないんですよ──。この3月、ヴイエムウェア日本法人の社長に就いたジョン・ロバートソン氏は、日本のユーザー企業の情報システムの扱い方をこう分析する。クラウド全盛となった今も、日本のユーザー企業の大多数はSIerにシステムの開発から運用まで任せる傾向は不変であり、日本でのビジネスを伸ばすにはSIerの味方であり続けることが不可欠だと考える。ヴエイムウェアの戦略を聞いた。
仮想化技術の軸はぶれない
──この10年余り、“仮想化のヴイエムウェア”として成長してきたわけですが、トップを引き継いだロバートソンさんとして、今後のビジネスをどう伸ばしていきますか。 ロバートソン ご存じの通り、日本での初期の取り組みは、ただ単純に「サーバーを仮想化しましょう」というところから始まり、今では「データセンター(DC)全体や、スマートデバイスを含めたあらゆるデバイス、アプリケーションで仮想化技術をフルに活用していく取り組み」に幅が広がっています。仮想化はソフトウェア技術の一つですので、当社ではこのソフトウェアによって情報システムの中核的存在であるDCや、企業で使うシステムそのものをデファインド(定義)していくことが基本戦略です。
──ソフトウェアで定義するとおっしゃる割には、昨年11月にソフトバンクグループと協業して、パブリッククラウド「VMware vCloud Air(ヴイクラウド・エアー)」を立ち上げました。既存のビジネスから大きな方向転換ですよね。 ロバートソン それはちょっと違います。仮想化をする最大のメリットは、アプリケーションや業務システムをハードウェアから切り離して運用できることです。ここ、すごく重要なポイントであって、当社はこの一点をずっと主張し、ビジネスを伸ばしてきた会社です。その技術が発展し、サーバーやデバイスだけでなく、DCという巨大なハードウェアからも論理的に切り離して、業務アプリを自由に、好きな場所に移動できるようになったわけです。「vCloud Air」はその移動先の一つの選択肢に過ぎません。
──なるほど“仮想化”というビジネスの大きな軸は変わらず、その範囲をどんどん広げていっているわけですね。 ロバートソン 仮想化をすることで、特定のプラットフォームに縛られず、必要に応じて簡単に業務アプリを移し替えたり、拡張・縮小できるわけです。どのサーバーやデバイスでも自由に行き来でき、いまやDC間でも移動できます。業容拡大でもっと処理能力の高いDCへ業務アプリ一式を移動することも容易ですし、あるいはもっと安いDCが出てきたら、そこへ移し替えるのもありでしょう。
「vCloud Air」のDCは首都圏との同時被災の可能性がほとんどない西日本地区にありますので、東日本のユーザーにとってはBCP/DR(事業継続計画/災害復旧)用の拠点として活用できますし、もし「vCloud Air」が気に入らなくなったら、他のDCやプライベートクラウドへ移動させることも自由です。
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