データバックアップに特化した製品・サービスの開発・販売を手がける米アクロニスは、ワールドワイドでパートナー企業の支援強化に踏み切っている。バックアップ製品・サービスの市場で競争優位を確保するには、パートナー企業との密接な協業が不可欠との判断からだ。そんな同社の日本での事業展開を一手に担っているのが、2015年2月、アクロニス・ジャパンの代表取締役に就任した大岩憲三氏だ。さまざまなメーカーでパートナー支援の施策を講じ、実績を上げてきた大岩氏。その経験を、アクロニスの日本での成功にどうつなげようとしているのか。戦略をうかがう。
ローカライズのレベルを上げる
──アクロニスに入社し、まず感じたことは? 大岩 驚いたのは、当社の製品・サービスに対する市場の評価が思っていた以上に高いことです。パートナー企業やお客様の間での評判がすこぶるいい。もう少し厳しい言葉がくると身構えていたのですが、いい意味で拍子抜けしましたね。
──そうした評価の高さは、どこからきているとお考えですか。 大岩 当社は、会社としての規模はむしろ小さいほうです。ですが、単純にバックアップ製品・サービスにかかわっている人員の数を比較すれば、大手の競合ベンダーに引けをとりませんし、勝っているところも少なくありません。しかも、バックアップに特化したベンダーとして、お客様にとって最適なバックアップ環境をどう整備・提供するかの一点に集中し、技術とノウハウに磨きをかけてきました。その積み重ねが、非常に高い評価につながっていると考えています。
──そもそも、アクロニスへの入社を決めた理由は、なんだったのですか。 大岩 理由は大きく四つあります。一つ目は、アクロニスがバックアップに特化したベンダーであること。二つ目は、コンシューマ向けから法人向けに至るまで、広範な製品・サービスをラインアップしていること。また三つ目は、バックアップ製品・サービスの市場性の高さです。ご存じのとおり、企業ITのクラウド化が進むなかで、ITインフラ系の製品市場は頭打ちの状況にあるとされています。ですが、バックアップ製品に限っていえば、ITインフラ全体に対する適用率(アタッチレート)が約2割程度。つまり、バックアップの市場は、まだまだ伸びる可能性を秘めているわけです。
そして、最後の四つ目の理由が、アクロニスが間接販売モデルを採用し、パートナー企業を経由して製品・サービスを提供するスタイルを貫いている点です。このようなビジネス・モデルを採用している会社ならば、私の経験・ノウハウが十分に生かせるのではないかと考えたわけです。
──確かに、経歴を拝見すると、長くパートナービジネスにかかわってこられましたね。 大岩 ええ、そうなんです。これまで勤めた会社でも、肩書に「チャネル」や「パートナー」といった文言が明記されるケースがほとんどでした。要は、私のスペシャリティは、チャネルの開拓やパートナー企業とのコラボレーション強化にある。アクロニスも、その辺りの経験や実績を見込んで、私を雇ってくれたのかもしれません。「この人間は、経営者としての手腕は未知数だが、パートナー戦略の強化には役立ちそうだな」と(笑)。
── その大岩さんからみて、アクロニス・ジャパンはどのように映っているのですか。日本でのパートナー戦略をさらに推し進めるうえで、組織上の課題のようなものは感じておられますか。 大岩 社内の雰囲気はとてもいいのですが、少しグローバルな考え方に捉われすぎている感はありますね。これは外資系の組織に共通してみられる傾向なのですが、外資系だからこそ、もっと地域に根差した発想の下で、ビジネスを展開していく必要がある。要するに、製品・サービスはもとより、パートナー企業やお客様とのコミュニケーションのあり方についても、「ローカライズ」、あるいは「ジャパナイズ」が必要だということです。もちろん、グローバルで統一したビジョンや考え方をもつことは大切です。ですが、各地域でビジネスを拡大させていくには、そのうえで、ローカライズのレベルを上げていく必要があります。米国本社からも、「日本に合ったビジネスを手がけてくれ」と求められています。ですから、今後はもっと「アクロニス・ジャパン」ならではの方針・戦略を打ち出し、日本市場に対するわれわれのコミットメントの強さ・意欲の高さを、目に見える形で、日本のパートナーやお客様に訴求していきたいと考えています。
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