万単位の従業員を抱える世界的な大企業が次々と「Box」を採用している。オンライン上にデータを保管するサービスを基本としつつも、その先には企業の“コンテンツプラットフォーム”になる狙いがある。データの集中管理方式による高度な情報セキュリティを保つとともに、さまざまなアプリケーションやクラウド/SaaS型サービスと連携。企業内/企業間で情報をセキュアに共有するプラットフォームとして成長するBox日本法人の古市克典社長に話を聞いた。
放っておくと散逸するデータ
──「Box」といえば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の約30万人の従業員がユーザーで、つい先日もイギリスの大手製薬会社アストラゼネカの世界100か国余りで勤務する全従業員約5万1000人をユーザーにするなど、利用者数を大きく増やしています。直近ではNTTコミュニケーションズとの協業も発表されました。失礼な質問ですが、Boxとはよくある“オンラインストレージ”サービスの一つなのではないのですか。 古市 オンラインストレージはBoxの機能の一つではありますが、本質的な優位性は“情報セキュリティ対策”にあるんですよ。企業の情報システムは、放っておくとどうしても分散する傾向にあります。本社と支社支店、海外法人、さらに部署内でも個人のパソコンやスマートフォン、あるいは“シャドーIT”と呼ばれる情報システム部門が管理し得ていない端末へのデータの散逸など挙げたら切りがない。Boxはこれらを集中管理して、情報セキュリティを高めることができる点がユーザーに評価されているのです。したがって、自分たちではBoxのことを“コンテンツプラットフォーム”だと認識しています。
──情報セキュリティを高めるという点では、MicrosoftやSalesforceといったオンラインストレージ機能でも同様ではないですか。 古市 ここもよく勘違いされる点なのですが、Boxは例えばMicrosoftの「Office」や「Salesforce」、一部「Google Apps」などともつなげられますので、完全な競合ではなく、むしろ協業が可能です。企業内のデータは放っておくと分散すると言いましたが、クラウドサービス全盛の現在においても、A社のコラボレーションサービス、B社の営業支援サービス、C社の業務アプリケーションサービスといった複数のクラウド/SaaS型のサービスの活用度合いが高まれば高まるほど、データはやはり各クラウドサービスベンダーが管理するストレージへと分散していってしまいます。
GEがBoxを使う前段階では2年くらいかけて、徹底的にBoxの情報セキュリティを調べ上げ、初めてゴーサインを出しました。それほどGEは、散逸していくデータの管理に困っていたのです。GEで採用されたことにより、情報セキュリティにすぐれ、一元的な管理が可能なBoxという評価が定着しました。直近では無料ユーザーも含めて約3400万人になりましたが、当社の収益の柱は、もちろん強固な情報セキュリティを求め、有料サービスをお使いになってくださる企業ユーザーです。
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