日本のニーズを徹底的に調べる
──御社のサービスが企業ユーザーから強く支持されているのは理解できましたが、古市さんが、ボックスジャパンのトップに就かれたのが2013年8月ですから今から2年近く前。この間、米国が先行し、日本では遅れが目立ったような印象も受けますが、どうなのでしょうか。 古市 国内でも、大手ユーザー企業の方々に採用していただいていますが、この仕事を引き受けてからの最初の1年は、知名度のなさに泣きました。大切なデータは基本的に1か所に集めて集中管理したほうがセキュリティを高められるのですが、最初はこれがなかなか理解していただけなくて、とても苦労しました。ここ1年ほどは国内でも本格的に商談が活発化して、流通・サービス業やネット企業、教育機関などに採用していただいています。私としては、情報セキュリティを非常に重視する金融機関のユーザーにもぜひ採用してもらえるよう働きかけていきたい。
──先日(6月16日)、NTTコミュニケーションズとの協業を発表するとき、米本社のアーロン・レヴィ共同創業者CEOが来日されましたね。2005年、まだ学生のときに友人らとともに起業したとお話しされていましたので、まだ30歳前後くらいでしょうか。お気を悪くしないでいただきたいのですが、古市さんとは親子くらいの年の差がありますよね。 古市 いえいえ、せめて「娘のちょっと年上の彼氏」くらいにしておいてくださいよ(笑)。冗談はさておき、私も初めて米本社に出向いたときは若い印象を受けましたが、実はアーロンを支える経営陣がとてもしっかりしているんです。もちろんアーロン本人が強いリーダーシップとBox事業に関する明確なビジョンをもっていることに違いはないのですが、COO(最高運用責任者)のダン・レヴィンやシニアバイスプレジデント(VP)のサム・シュアレスをはじめとする実力者がアーロンの両脇をしっかり固めている。私は日本法人のトップを引き受けるにあたって、彼らに「日本のユーザーの要望はしっかり聞いてほしい」と言ったところ、「わかった。むしろ徹底的に日本のユーザーニーズを調べてくれ」と快諾してくれたんですね。外資系企業に勤務した経験から、ややもすれば日本法人の発言権が希薄なケースもあります。日本のユーザーの要望が聞けないのであれば、この仕事は断るつもりでした。
──確かに、外資系のなかには日本法人が営業所くらいの存在感しかないケースはありますよね。 古市 Boxの場合、集団経営体制がしっかりしていて、米国企業らしい顧客主義が貫かれているところに、私も経営者の一人として可能性と魅力を感じました。
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