富士通グループの強いインフラをつくる
──DC事業を統合・再編する狙いは、端的にいうと何だったのでしょうか。 DCの運用コストの最適化です。従来、富士通がもっていたDC、FIPがもっていたDCには、それぞれ、数十人から数百人規模の運用者がいました。これをできるだけ集約して、リモートで対応できるようにし、現地は最低限の人員だけを配置してムダを排除し、効率化を図るということです。当然ながら、いろいろな自動化ツールの適用なども合わせて行わないといけません。
また、単純にコストダウンということだけでなく、それぞれが今まで培ってきたノウハウを組み合わせることによって、もっと高い付加価値も提供できるはずです。単純にシステムを監視して通報して終わりではなく、この情報をトラブルシューティングや改善提案につなげられるような体制づくりも、DC事業の価値向上のためにやっていきたいと考えています。
──富士通のような総合ITベンダーのグループ会社は、グループのなかで与えられた役割を果たすことと、独自の成長を両立させなければならないという難しい課題を抱えていることが多いですが、これにはどう立ち向かいますか。 富士通と一緒に攻めるのは、「汎用的な広い世界」と言っていいでしょう。富士通は、今年5月、新しいインテグレーションのコンセプトである「FUJITSU Knowledge Integration」や、その中核となるパブリッククラウドのIaaS/PaaS「K5」を発表しました。DC事業が統合・再編された今、これらの製品と、富士通の従来サービス、そしてFIPが提供してきたIaaSの「HyConnect」などをうまく連携させて機能を強化し、グローバルの大手ベンダーとも競える強いインフラをつくっていくことがFIPの重要な役割です。
一方で、ギフトカード、ポイントカードのSaaS型サービスや、中小の病院向け電子カルテのクラウドサービスなどにもFIPは強みをもっていて、これは新しく市場を広げ、独自の成長を実現できる領域です。基幹システムを含めた刷新が必要になるような商材ではないので、富士通グループとつき合いのない、新規のお客様にも積極的にアプローチできます。ここでお客様の評価と信頼が得られれば、基幹系や、ビッグデータ解析などのアップセル(より上位の商品を勧める)案件につながる可能性もあって、結局は、独自の成長とグループへの貢献は、二律背反の課題ではないということだと思っています。
──今後の成長の核になる事業を強いて挙げるなら、何でしょう。 富士通も同じですが、現状はSIの部分が売り上げとしては一番大きいです。ただ、ここはだんだんシュリンクしていく世界だとみています。そこで、今までSEが個別に組み上げてきていた業種特化型の基幹業務システムのノウハウなどを、クラウドのインフラにどんどん盛り込んでいって、お客様にとってより使いやすいサービスのプラットフォームを構築していく。これをITアウトソーシングと組み合わせるようなモデルは、大きな伸びが期待できると考えています。
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