2兆円を投じて品揃えを充実させてきた
──しかし、デルはハードウェアのメーカーであり、クラウドとは相性が悪いというイメージをもっている人もいまだに多いのでは。 まず、デルはITの歴史からすると若い会社で、レガシーを経験していません。オープン化の時代に大きく育った会社であり、オープンなアーキテクチャを貫いたからこそ実現できる経済性、俊敏性、整合性、しかもそれがしっかりした検証にもとづいているというのが最大の強みです。そして、クラウドの世界もオープン化の思想の延長上にあります。クラウドネイティブな環境は当社のホームなんです。
レガシー環境で構築した大規模なシステムは、現代の基準からすると、あまりに多くのロジックをアプリレイヤに抱え込んでいます。例えば、IoTやビッグデータの活用を見据えたデータの連係や統合なども、オープンな世界では、インフラに近いレイヤにロジックが切り出されてオートノミックに行われますが、レガシー環境では、これをアプリのなかでやっている。だから、どこか修正しようとしても費用、工期ともに膨大になってしまうし、運用・保守の負荷が低減できないわけです。
──そこでデルができることとは。 デルは近年、オープンな環境にお客様が移行するためのあらゆるツールやソフトウェア、セキュリティ商材を含めて、約2兆円を投じて品揃えを充実させてきました。私もデルに入って、こんなにいい品揃えがあるのかとびっくりしたんです。デルはこれらを駆使して、アプリレイヤからプラットフォーム、インフラレイヤにいろいろなロジックを切り出して差し上げるお手伝いをします。そして、お客様が解放された資源で、機動性、俊敏性にすぐれたクラウドネイティブな世界で、ビジネスの革新に役立てられるITソリューションをつくるところまで大胆に導いて差し上げるのがミッションだと考えています。オープンなDNAをもつデルだからこそできることなんです。
──デルにとっても大きなチャレンジです。 もちろん、われわれ自身も変わらなければなりません。従来の主力は「モノ」売りのビジネスでしたが、お客様との対話のなかで、お客様にとって事業継続や成長に必要不可欠な「コト」を理解し、それを実現できるように適切にモノを組み合わせて提案する感覚を身につけなければなりません。
そしてもう一つ非常に重要なのは、パートナーとの連携、協業です。デルはダイレクトモデルといわれる直販形態のビジネスモデルで有名になりましたが、もはや事業ポートフォリオは大きく変わっています。レガシー環境からのトランスフォーメーションは、1社では絶対に実現できません。クラウド環境のエコシステムを構築されているベンダーはもちろん、ビジネスモデルの変革やそのためのアプリ開発などは、日本の大手SIerの最大の生業で、世界に冠たる最高レベルの品質を誇っておられます。
正しくコトを理解して、それを実装されるこうしたパートナーの連携を大変重視しています。私自身、1社完結では絶対に不可能な領域で、パートナーと連携してビジネスをずっとやってきました。私と同じく8月にパートナー戦略の責任者として副社長に就任した松本(光吉氏)も、大手外資ベンダーでパートナービジネスに従事してきた代表的な人間です。過渡期にあるパートナービジネスの新しい仕組みづくりを急ピッチで進めます。
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