NTTデータの岩本敏男社長は、「ITビジネスの本質は、テクノロジーの進化にある」とし、テクノロジーの爆発的な進展によって、SIerのビジネスも「不連続の発展」に遭遇する場面がより増えると予測する。かつて、アメリカの未来学者アルビン・トフラーが唱えた「脱工業化社会」の到来が現実のものとなり、IoTやビッグデータ、ロボティクスなどによる“第三の革命”が本格化。NTTデータ自身もグローバルトップのSIer集団で一段と存在感を発揮するため、今の延長線上ではない「不連続の発展」による断絶を乗り越えて、ビジネスを伸ばす方針だ。
質的変化を伴う「不連続の発展」
──情報サービス業界は、良好な事業環境が続いているように見受けられますが、岩本社長はどうみておられますか。 国内においては、ご指摘のとおり経営環境はまずまずといえるでしょう。当社においても国内市場を定義しなおし、既存ビジネスとは違う観点で市場の再発掘──リ・マーケティングに取り組んだ成果として、国内での売り上げは増収基調です。
しかし、ITビジネスの本質は、テクノロジーの進化にあります。指数関数的な進展、あるいは爆発的な進展という表現が適していると思えるほどのスピードの速さで、見方によっては、あたかも「不連続の発展」にすらみえるテクノロジーの進化こそが、ビジネス拡大の原動力であると捉えています。
──「不連続の発展」とは、どういうことですか。 曽呂利新左衛門の米粒の逸話ではないですが、例えば、あるロボットが1日目には2メートル歩き、2日目には4メートル、3日目は8メートル……と歩ける距離を増やしていくと、30日目にはトータルで地球を25周するほどの途方もない距離を歩けるようになってしまう。文字通り“長足の進歩”で、最初はよちよち歩きで、使い物にならないようなロボットでも、気がついたときには人間を遥かに上回る能力を発揮する。ただ、性能がよくなるだけでなく、ある時点で企業の業務を革新したり、社会そのものを変えてしまうような作用を及ぼしたりと、質的にも変わっていく。
思い起こせば、インターネットの黎明期は、ほんとに学生のおもちゃみたいな存在でしたが、わずか20年あまりで企業や社会に欠かせない存在になりましたよね。有線だけでなく、インターネットの無線接続は高速化の方向にこれからも進んでいくのは確実です。
つまり、技術の飛躍的な進化、それに伴う企業や社会の変革のなかに、ITビジネスのチャンスがあると私は考えているのです。一見すると連続した発展のようにみえますが、今、起こっている変化は、明らかに質的変化を伴う「不連続の発展」なのです。
──ここ20年のインターネットの進化は「産業革命」と似た文脈で語られることが多いですよね。 アメリカの未来学者アルビン・トフラーの著書『第三の波』(1980年)で、「農業革命」「産業革命」、そして「脱工業化社会」が訪れると記されていましたが、私は、まさに今、情報化による本当の意味での脱工業化が進行中だと肌で感じています。それが第三の“革命”であれば、これまでの延長ではあり得ないのです。
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