次は「インテリジェンス」が商材になる
──パートナー各社に関心をもってもらえそうな新たな施策はありますか。 今年1月、ファイア・アイは米アイサイト・パートナーズを買収しました。これは、サイバー犯罪集団をウォッチしている脅威インテリジェンスの企業で、「犯人特定」につながる可能性のある知見をもつ企業です。具体的な話はこれから詰めていきますが、日本市場では、セキュリティ・インテリジェンスを軸にしたサービスを、MSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダ)などのパートナー様にOEM形態でご提供することを決定しています。
──インテリジェンスの提供、というのは具体的にどんなサービスになるのでしょうか。 サイバー攻撃の被害に遭ったとき、企業の経営者が求めるのは「誰がやったんだ」「何を盗られたんだ」「何をすればいいんだ」といった情報です。今、金融機関のサイバー犯罪被害額がうなぎ上りで増えているのに、警察でも犯人を特定できていない。それに対して、誰が、いつ、どんなやり方で、何をもっていった可能性があるのか、これらの情報をレポートとしてお出しします。さらに、2月に買収した米インボタスの技術を用い、セキュリティポリシーに沿ったインシデント対応の自動化も実現していく予定です。
──中堅・中小向けや、サービス事業の拡大となると、今後新たな協業先も必要になりますね。 NX Essentialsシリーズを発表しましたので、中堅企業や地方自治体にお強いパートナー様とはぜひ組んでいきたいですね。そのために、きちんと商品や技術の特徴をお伝えしていかなければいけないと考えており、パートナープログラムも見直しています。ファイア・アイをキャッチアップしていただくことにメリットを提示するため、セールス、技術、サポートなどのスキルを認定する制度をきちんと整備しました。
──売上ボリュームだけではなく、サービスの質でもパートナーとのおつき合いの深さを測っていくと。 ファイア・アイ製品を取り扱うスキルを身につけることで、自分たちのビジネスが伸びていくということは、すでに多くのパートナー様に理解していただいています。今回はその中身について、きちんと定義をしたということですね。認定制度を設けるもう一つの理由としては、サイバーセキュリティの世界に身を置くエンジニア、コンサルタント、アナリストといった方々の報酬が低すぎるのではないか、という問題意識があります。資格を設けることで、認定を取得した方の収入が多少なりとも大きくなってほしい、それがもう一つのメッセージでもあります。

‘自社でファイア・アイを利用するだけでなく「うちも売りたい」というケースが増えている’<“KEY PERSON”の愛用品>もしもスペアが手に入るなら 海外出張中に空港で購入したボールペン。適度な重さで書きやすく、長年使い続けている。「モノへの執着はないタイプ」(茂木社長)だが、このペンはすっかり手になじんでいるため、同じものが手に入るならもう1本ほしいという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インタビューで茂木社長も言及したように、ファイア・アイは研究開発に膨大な先行投資をしており、現在もまだ赤字が続いている。それでも革新的な技術には惜しみなく資金が供給されるのが米国のIT市場。矢継ぎ早にM&Aを繰り広げ、セキュリティ・インテリジェンスを次の柱となる事業に育てようとしている。
茂木社長は「インテリジェンスの最も進んだ段階とは、予知・予見できること」と話す。過去・現在の知見をもとに、次にどんな手法でどこが狙われるかを予知できれば、事後対応のみならず防御も自動化できる。セキュリティ・インテリジェンスのメリットをわかりやすく説いていくことも今後の重要な課題だ。(螺)
プロフィール
茂木 正之
茂木 正之(もてき まさゆき)
1955年生まれ、長野県出身。ミネベア、日本ディジタル・イクイップメント(DEC)、ケイデンス・デザイン・システムズなどを経て、95年に日本オラクルへ入社し、パートナービジネスを中心に従事。2001年、同社常務執行役員に就任、同年ミラクル・リナックスの代表取締役社長を兼任。10年6月、マカフィーに入社し、エンタープライズ営業統括取締役常務執行役に就任、法人向け事業を統括する。13年8月よりファイア・アイ日本法人の代表を務める。
会社紹介
2004年、現副会長兼最高戦略責任者のアッシャー・アジズ氏が米国で創業。安全性が確認できないファイルを仮想環境上で解析する「MVXテクノロジー」をベースとしたセキュリティ製品で急成長した。12年5月、かつて米マカフィーのCEOを務めたデビッド・デウォルト氏が取締役会長兼CEOに就任。14年にはインシデント対応の米マンディアントを買収し、マルウェア検知後の処置・調査ソリューションを強化している。