沖電気の色は変化する
──これまでは、ATMなど金融などの業種に強いイメージがありましたが、「業種」から「業務」というのは、具体的にどんな展開になるんでしょうか。 例えば、金融事業では、「FinTech(フィンテック)」という言葉がバズワードになっています。フィンテックは金融機関がやっているわけではないですよね。流通を含めた多くの業種に決済業務の一つとしてフィンテックは、業務として広がっていくでしょう。金融機関だけでなく、業種を越えて当社がもつ業務の強みを生かしサービスを展開します。
──フィンテックを例に出しますと、総合IT企業のNECや富士通なども取り組み始めています。こうした企業と変わらない存在になることを意味していますか。 いえ、当社の強みは、端末系や業務アプリケーションなどで顧客接点があることです。そうした部分を生かしながらの展開になりますので、総花的にソリューションを展開することはしません。例えば、ATMをはじめ金融機関や航空会社の旅客系の部分では、多くの企業と一緒に仕事をしていますが、こうした顧客接点の強みを生かしながら、端末や業務アプリなど特化した得意分野をねらいます。
──基幹システムなど、業務に関連するメインストリームのITシステムで沖電気工業は表に出ませんが、端末を含めインフラを下支えする部分に強みがあり、ここで力を発揮するということですか。 そうです。ですので、ホストコンピュータや基幹システムなど、でかいシステムに当社はあまりタッチしていません。当社は、ATMやプリンタなど端末の部分に強みがありますので、ここで力を発揮したいと考えいます。
──鎌上社長のもとでは、顧客やITベンダーからみると、沖電気工業の色は変化するんでしょうか。 ある意味で、変えていきたいです。というのは、未来永劫同じだと企業は衰退します。世の中に合った形で、つねに変化していくことが企業の永続性や成長性につながる。先ほど申し上げた通り、「業種」ということだけでなく「業務」向けのサービスを提供する企業へと変化したいと思います。
──ところで、業務にサービスをシフトするということですが、そこへシフトするうえで強みとなるものづくりの現状と将来の方向性を教えてください。 ものづくりでは、国内と海外に工場を置いています。ATMの中国工場は、マーケットがそこにあるので、地産地消の意味でそこに置いています。かつては、安価な労働力を求める目的で、アジアに工場を設置する時代もありました。当社のものづくりで、コンシューマ向け製品のような大量生産を行うことはないでしょう。工場は、プリンタを除いては、消費財でなく生産財の製造拠点です。ただ、技術開発は日本をベースに展開しますが、何らかの見直しが必要になると思います。次の柱となるモノに関しては悩みの部分です。
──ATMやプリンタについても、変えていくのでしょうか。 例えば、EMSの部分でも、大規模なEMSと勝負するのではなく、当社の特徴を生かしたEMSを展開する。このことは、他のものづくりも同じ。ATMやプリンタにしても将来的に安泰ではありません。いずれはなくなることを想定し、今後どうするかということが、次期中計のポイントでもあります。
──センサデバイスなどは沖電気工業の強みを生かせると思うのですが。それとも、まったく新しいものが生まれるのでしょうか。 センサは入力装置ですので、信号を出力しています。その信号を出して終わりでなく、出た信号を上のレイヤにどうつなぐかというデータ処理を含めて、使えるものをつくりたいと考えています。展示会でも一部展示していますが、光ファイバーを使ったセンシング技術などは、一例です。単純に光ファイバー通信のデータのひずみ方によって、何をセンシングしたかということを判断しますが、そうしたノイズをキャンセリング技術も必要になる。まったく新しい奇想天外のものというよりは、当社の技術やノウハウを生かした組み合わせの製品になるように思います。
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