2016年4月、電力小売全面自由化がスタートした。多くの企業が電力事業への新規参入を検討し、大いに盛り上がったが、そこは高い信頼性が求められる社会インフラ。自由化されたとはいえ、参入のハードルは高い。そこで、多くの企業が頼ったのが、関電システムソリューションズだ。関西電力グループのIT企業だが、ここ数年はコンサルティング部隊を設置し、業務コンサルティングに注力。電力自由化によって、活躍の場を広げた。また、電力系IT企業として唯一、電力小売事業者向けソリューション「NISHIKI」を提供。関電システムソリューションズが目指す「フルサポート」にとって、大きな一歩となった。
電力自由化の本番はこれから
――電力自由化がスタートする10か月まえに社長に就任されました。これまでを振り返っての感想をお聞かせください。
大変でしたね(笑)。大変なときに就任したなというのが実感です。電力自由化の直前ですから、関西電力向けで多くの案件を抱えているし、NISHIKIもありましたから。
――勝手な印象ですが、事前に騒がれたほどは、新しい電力会社が出てこなかったような気がします。
その通りですね。ただ、海外のケースでも、自由化後の1年目や2年目は、新規参入が少なかったと聞いています。だから、チャンスはまだあるのではないかと。
――電力系IT企業では唯一、電力小売事業者向けソリューションを提供しています。その強みを頼りにする新規参入企業は、多いのではないですか。
一応、電力ではプロですからね。その意味では負けません。当社では、コンサルティング部隊も頑張っていて、電力事業のコンサルティングからお願いしますという問い合わせをたくさんいただきます。
――電力自由化がスタートしたことで、NISHIKIの開発は一段落したと思います。
苦労しましたが、看板商品になりましたし、当社の名前も広まりました。採用面接のときに「NISHIKIやりたい」と言う学生がいたほどです。実施部隊も苦労をしましたが、大きな自信になったと思います。
――次はガス自由化ですが、どのようにお考えですか。
ガスは電気よりも市場が狭いですからね。そこを考慮しながら、進めていかないと。コンサルティングではガス関連にも取り組みますが、パッケージシステムを自社で開発するかどうかは、状況をみながらです。
「フルサポート」で外販を強化
――コンサルティング部隊をつくって、コンサルティングからシステム構築、インフラ構築、運用保守まで「フルサポート」で支援できる体制を整えて、関西電力グループ以外の、いわゆる外販を増やす取り組みをされてきました。電力自由化に関連するグループ内の案件が落ち着けば、いよいよ外販を本格化するという機運になってきているかと思うのですが。
まだグループ向けの売り上げが8割ですから、これからですね。外販の比率を上げるのもそうですが、関西電力グループ向けの売り上げは、それほど伸びないと思っているんです。だから、これから伸ばしていく部分は、外販部分ということになるわけです。
――電力自由化でNISHIKIが脚光を浴びましたが、外販全体ではどれくらいを占めるのでしょう。
ほかの商材のほうがまだまだ大きいですね。この1年はNISHIKIが大きく伸びましたが、これまで取り組んできたCRMや水道関連、管理会計、販売管理などを注力商材として取り組んでいます。エンジニアも、営業担当者も、そこに重点的に配置しています。水道なんて、もう何十年もやっているので、ノウハウがたまっていて、お客様から選ばれる状況にあります。そこをもっと尖らせていこうかと。
――水道というのは、顧客は自治体ですか。
自治体や水道企業団になります。これもコンサルティングの部隊がおりますので、ベースのところの経営の話から入って、システムにつないでいくという流れができています。
――コンサルティング部隊は今、どのような組織になっているのでしょうか。
コンサルティング部隊は、三つのグループに分かれています。ストラテジーサービスグループ、情報戦略サービスグループ、エンタープライズサービスグループ。新電力向けは、ストラテジーサービスグループが担っています。
業務戦略グループは、どちらかというと、自治体関連。地方創生などの取り組みをやっています。その関連で、スマートフォンと通信ロボットを使った高齢者の見守り支援システムを開発したのです。引き合いもいろいろいただきまして、当社としては大きなトピックスですね。兄弟会社のケイ・オプティコムと一緒に取り組んだもので、こういったおもしろいこともやっています。
コンサルタントの人数は少ないのですが、なかなか個性派揃いで、強力な部隊です。
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