広域的な事業は得意分野の一つ
――電力系IT企業ですが、外販に関しては電力分野とは全然違う印象です。それをどう捉えたらいいのかと。例えば、8割がグループの仕事で、残りの2割を増やそうというときには、電力の強みを生かす、つまり電力自由化に力を入れるのはわかりやすいのですが、例えば見守りシステムとなると、なんでだろうって思うわけです。
電力会社の事業は、インフラの設備だけではありません。お客様情報の管理やサポートの業務があれば、社内には経理システムや人事システムなど、一般企業と同様の業務システムを活用しています。われわれが得意としている分野を外販するというのは、結局、すべての分野にあてはまることになるのです。
あえて挙げるなら、水道や地域創生といった広域的な事業は、長期で考える必要がありますから、広域で事業を展開する電力のノウハウをもつ当社にとって、それらは得意分野になります。
ただ、外販では、システム開発とデータセンターの売り上げが大きいというのが現状ですね。
――データセンターは、どこに強みがあるとお考えですか。
都市型ということ。関西には大きなデータセンターはたくさんありますが、多くが郊外型です。そして、電力事業を支えてきた信頼性は、データセンターの運営にとっても大きなアドバンテージになります。
これから古いデータセンターの入れ替え時期を迎えますので、この先も十分に需要がでてくるでしょう。ただ、当社のデータセンターは、すでに8割ほどが埋まっていますので、今後の対応も考えなければいけません。
――関西という地域性については、どうお考えですか。関東にも注力されていますが。
東京には事務所をつくって案件獲得に動いていますが、東京の需要と比べると、関西はこれからという感じがしています。ただ、東京の勢いは関西にも波及するので、その波が来るまえに、しっかりと力をつけて、はやいうちに関西の需要を取り込んでいきたいですね。
――人材についてはどうですか。IT業界は人材不足の状態が続いています。
売り手市場ですよね。大規模開発が行われている東京に人が吸い寄せられているのは確かです。当社も電力自由化対応では、東京のお客様のところで仕事をさせていただきましたが、人を集めるのは大変でした。関西も人材は不足しているとは思いますが、東京ほどではないと思います。
――人材といえば、海外に人材を求めて、これまでオフショア開発にも取り組んでこられています。
オフショア開発は、中国とベトナムで行っています。なかでもベトナムの人が熱心ですね。日本語もしっかり勉強しています。ただ、技術的には中国ですね。ベトナムはこれから。でも、オフショア先としては有望です。
それから、シリコンバレーにも事務所を置きました。ITの先進地域で、技術動向などをキャッチアップするのが目的です。技術研修で二人派遣しています。
――最後にIoTについてお聞かせください。電力関連では、IoTが積極的に活用されているイメージです。
電力会社にはたくさんの設備がありますし、さまざまなセンサを活用しています。そこからデータを収集して活用することにも取り組んでいて、一部で無人化なども実現しています。ただ、それがIoTなのかといえば、ちょっと疑問ですね。センサのデータを活用するのは、昔からやっていますから。データを活用して何かを生み出すようなことに取り組みたい。
当社のDNAは、
電力で培った真面目さ、そして信頼。 <“KEY PERSON”の愛用品>昼休みにみつけた小物 休み時間にふらりと立ち寄ったお店でみつけた小物。手に取ったら「おもしろい」と感じて衝動買い。以降、机の上に飾っている。何に使うわけでもないが、小物が醸し出す雰囲気に癒されている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
大学では、雷を研究していたという。鉄塔に雷が落ちたときに停電が起きる仕組みを楽しそうに話してくれた。関西電力では、雷事故の低減に貢献する研究をしていたことも。雷が原因の停電を経験しなくなったのは、その研究のおかげかもしれない。
関西電力では、技術屋として、主に電力の流通(変電、送電、配電)関連に携わってきた。設備の点検で、山に登ったり、ヘリコプターを使ったりしたこともあるという。いまならセンサを使って遠隔で確認できそうだが、簡単ではないとのこと。AIについても、似た返答をされていた。浮ついたことは言わない。
山元社長は、新しいことをしたくて、技術屋になったという。浮ついたことは言わないものの、「IoTで何かを生み出したい」と、新らしいことに取り組む気持ちは今も変わっていない。雷以上の破壊力があるアイデアを期待したい。(弐)
プロフィール
山元康裕
(やまもと やすひろ)
1956年、兵庫県生まれ。80年、大阪大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。同年、関西電力に入社。電力システム室架空送電課長、グループ企業のケイ・オプティコムの法人営業部長、関西電力の電力システム技術センター所長などを経て、2012年、執行役員京都支店長に就任。15年6月、関電システムソリューションズの代表取締役社長に就任。
会社紹介
関西電力グループの総合情報サービス企業。グループのITを担う一方で、社会インフラを長年支えてきた信頼と技術力を武器にグループ外にもビジネスを展開。近年では、コンサルティングからシステム開発、インフラ構築、運用保守まで「フルサポート」で支援できる体制を整え、顧客の経営効率化や業務改革などをサポートしている。