軸足はあくまでも富士通製品
──エフサスは近年、グループの先陣を切ってマルチベンダー対応を進めているという印象もあります。デジタルビジネスに踏み込んでいくことで、その傾向はさらに強まるのでしょうか。
富士通がものをつくっているという強みはあるので、軸足はやはり富士通製品に置くべきだろうというのが私の考えです。ハード、ソフト、サービスを含めて、さまざまなベンダーの優れた製品をきちんと目利きしたうえで、富士通製品と組み合わせていく。富士通以外の製品同士の組み合わせでは、ほかのSIベンダーとの差異化もかなり大変です。軸足と、外に踏み出す足、両方の最適なバランスをその都度考えていくというスタンスが必要なんだろうと思っています。
──エフサスのトップに就任したからこそみえてきた課題はありますか。
現場に寄り添い過ぎるがゆえに、どうしてもお客様からいわれたことの改善を優先してしまうところがあります。一見、手放しで賞賛すべきことのようですが、これからは、お客様のおっしゃることをただそのまま聞くのではなく、それを消化して、課題を先まわりして解決する提案ができるようなベンダーになっていかないといけない。あまりにもお客様と一体化していると感じるときがあるんです。お客様の本当の課題を見極め、それを一緒に掘り下げて解決する、真のパートナーになりたいですね。エフサスの現場のメンバーもさらにレベルアップしないと時代に置いていかれるという危惧があります。
──そのための施策は何か考えておられますか。
これからは、お客様が要件定義ができないような課題やビジネスがでてくるかもしれません。そうなると、要件分析の技法だけいくら覚えても仕方がない。SEやCEなどの現場のメンバーに求められるスキルは、プロデュース、コーディネート、デザインといったものに変わってくるでしょう。そういった教育をしてくことは重要だと考えていますし、彼らがよりお客様の課題の本質に迫る応援をしてあげる組織は必要だと思っています。
私たちのまわりにデジタルテクノロジーを生かす余地は
たくさんあって、それを確実にものにしていくことが
地に足のついたデジタル革命だ。
<“KEY PERSON”の愛用品>栄光のチャンピオンリング
今年3月まで、9年半にわたって部長を務めた富士通のアメリカンフットボールチーム「富士通フロンティアーズ」は、2014年度にライスボウルを制し、初の日本一に(16年度に再び日本一)。記念のチャンピオンリングをみるたびに、興奮がよみがえる。

眼光紙背 ~取材を終えて~
今年3月まで、9年半にわたって富士通のアメリカンフットボール部「富士通フロンティアーズ」の部長を務め、14年度、16年度と、2度の日本一を経験している。試合前、円陣を組んで檄を飛ばすのは部長の仕事。モチベーターとして、チームの雰囲気づくりには絶対の自信をもつ。
富士通エフサスの社長としても、「元気な人がたくさん働いていて、前を向いて新しいことに挑戦するのを誰も怖がらないし、失敗したらどうしようという不安を感じなくてもいい会社にしたい」と決意している。そんな社内の空気をつくることができれば、「成功する確率は上がり、数字は後から自然についてくる」というのが、濱場社長のスタンスだ。
社内の反応はというと、「なんかアメフトでみたことがある、元気そうなおじさんが来たとは思っているんじゃないか」と、謙遜しつつも手ごたえを感じている様子だ。(霹)
プロフィール
濱場正明
(はまば まさあき)
1954年2月生まれ。76年3月、神戸大学経営学部経営学科卒業。同年4月、富士通入社。2006年6月、経営執行役金融ソリューションビジネスグループみずほ、保険証券、クレジット・リース担当に就任。以降、経営執行役常務金融ソリューションビジネスグループ長、執行役員常務社会基盤ソリューションビジネスグループ長、執行役員常務社会基盤ソリューションビジネスグループ長(兼)ネットワークビジネスグループ長、執行役員常務金融・社会基盤営業グループ長(兼)ネットワークビジネスグループ副グループ長、富士通ミッションクリティカルシステムズ代表取締役社長などを歴任し、今年4月から現職。
会社紹介
1989年、富士通のCE本部から通信・情報処理機器の保守・修理部門が独立し、富士通カストマエンジニアリングとして設立された。現在は、保守サービスだけでなく、インフラインテグレーション、運用サービス、プロダクト販売などにも事業領域を広げ、トータルサービスベンダーを志向する。富士通が100%出資する完全子会社で、資本金は94億175万円。従業員数は16年6月20日現在で6576人。2017年3月期の売上高は2738億円。