直近の売り上げは年平均6%で成長
――しっかりとプロジェクトを主導することで、原価や品質、納期の管理を徹底する。それによって外販ビジネスの立て直しを図ったわけですね。
おかげさまで、外販ビジネスの売り上げが増えるとともに、日立システムズグループ向けのビジネスも好調に推移したことから、直近3年間は年率6%前後で成長しています。
外販、グループ向けの両方が伸びていることから、売上高構成比は、日立システムズグループ向けが6割余り、同グループ以外が4割弱と、大きな変化はありませんが、課題だった外販ビジネスの利益率を適正値に戻すことができましたので、利益面では着実に改善できました。
自分たちでつくった商材やストーリーが増えてきており、ユーザーへの提案活動も活発化してきています。そして、なによりもSIなりBPOで請け負った部分を、自分たちがしっかりとコントロールできるようになってきています。ユーザー企業のお手伝い要員ではなく、顧客の課題を解決するパートナーであり続けていくためには、それなりの仕込みや技術的な裏づけ、意識改革を伴っていかなければならないと考えています。
先の「グローバルセキュアデータ転送サービス」の開発にあたっては、ZenmuTech(ゼンムテック)の技術を採用しました。
データを細かく分割して、一つひとつの断片的なデータでは意味をなさない“無意味化”と呼ばれる非暗号系の手法です。これなら、欧州や中国などで実施されている暗号関連の規制にも対応できるし、アジアの一部でみられるような通信事情が不安定な地域へのデータ転送力も高まる。こうやって自分たちが中心になって課題解決に向かっていく姿勢が大切だと捉えています。
──今後のビジネスの方向性についてはどうですか。
日立システムズグループは、ASEANや中国、インド、欧米に拠点を展開して、海外ビジネスの拡大に取り組んできました。セキュアデータ転送サービスはこのグループのグローバル戦略に一致しますし、ビーコンと無線タグを活用したビジネスは、グループのIoTビジネスの一翼を担えると自負しています。
グループのなかで、当社は長年にわたって開発や運用の重要な仕事を担ってきましたが、これからはグローバルやIoTといった新しい領域でしっかりと自分たちの生存空間を切り開いていきたい。そのためにも、自分たちが中心となって提案できる商材づくりに、今後とも力を入れていきたいですね。
ユーザーのお手伝い感覚がどこかにあるとすれば問題です。
もし、プロジェクトに問題が発生したとき、
責任の所在が曖昧になって、対処できなくなる怖さがある。
<“KEY PERSON”の愛用品>用途で使い分けるこだわりの万年筆
社内でのメモ書き用、外出時の携帯用、重要書類のサイン用と使い分けている万年筆。「手書きにはこだわるほう」だといい、用途に応じて使いやすい万年筆を選んでいる。お気に入りの万年筆は20年以上愛用しているとのこと。


眼光紙背 ~取材を終えて~
営業現場の第一線にいた1980年代、提案・企画書のプロポーザルには、コピー用箋にシステム概要図を鉛筆で書き込んでいた。コピー用箋は方眼紙のような薄い罫が入っているため、フリーハンドでも美しい図形が書けるのが特徴だ。コピーすると罫のみ消える。
座右の銘は、「思ったことを念じ続ければ実現できる」。京セラフィロソフィーで有名な稲盛和夫氏の言葉からとったもの。顧客の課題を聞き込んで、プロポーザルに「自分ならこう解決する」との思いを一心不乱に描き続ける。そうすることによって、この解決策を実現するにはどうしたらいいのかの「手順や計画が自ずと考えられるようになる」と話す。
デジタル時代の今は、コピー用箋に手書きすることはなくなったが、それでもプロポーザルに魂を込める姿勢は変わらない。自分が何をやりたいかのかを途中で忘れないよう、心のコピー用箋に書きとどめておきたいものだ。(寶)
プロフィール
帆足明典
(ほあし あきのり)
1955年、大分県生まれ。77年、大分大学工学部卒業。同年、日本ビジネスコンサルタント(現日立システムズ)入社。2003年、日立情報システムズ(現日立システムズ)産業・流通情報サービス事業部営業本部長。05年、九州支社長。08年、中部支社長。11年、執行役員中部支社長。12年、常務執行役員関西支社長。14年4月、日立システムズエンジニアリングサービス社長に就任。
会社紹介
日立システムズエンジニアリングサービスは、日立システムズグループでシステム開発や運用を手がけている。再編を経て2013年、現社名となる。開発と運用の売上高構成比はほぼ半々。日立システムズグループ向けの売り上げが6割余り、外販が4割弱を占めている。従業員数は約1800人。