2018年度を最終年度とする中期経営計画の初年度で修正を余儀なくされたNEC。10月に発表した17年度上期決算では、増収増益を達成し、やっと上向きの兆しがみえてきた。16年から取り組んできた赤字事業を見直す構造改革の成果が実を結びつつある。18年は新規事業を中心とした再成長戦略に舵を切っていく方針だ。新野隆社長が描く青写真とは。
スピードアップが課題
──上期は増収増益となりましたが、セグメントごとではまだ厳しい状況がうかがえます。
上期は何とか増収増益を達成しましたが、日本航空電子工業を連結子会社化したことの影響が大きく、それを除くと若干ではありますが、減収減益となってしまいました。私としてはまったく満足していません。いくつか要因はありますが、国内の通信事業者の設備投資が低調に終わり、キャリアビジネスがうまくいかなかったことが大きな問題だと捉えています。
ただ、当初心配していた指名停止の影響を見極めることができた点はよかったと思います。このほか、国内のテレコムビジネスが少し下がり、ほかのビジネスでその穴を補えなかった点が大きな課題として残ってしまいました。
しかし、16年から取り組んでいる構造改革により、この上期は赤字事業のコントロールがよくできたと思っています。大きなマイナスが減少し、着々と改善が進んいます。つまり、赤字事業の改善は順調でしたが、成長のスピードが遅かった、それに尽きますね。
──成長事業として期待していた海外向けのセーフティ事業ですが、事例は増えましたが数字になかなか反映できていないように感じます。
海外のセーフティビジネスは、海外グループに事業部を移し、そこを中心にグローバル展開を進めています。17年度上半期は前年同期比で30%増やすことができました。ようやく成長のスピードが上がってきました。
今、世界はどこに行ってもセーフティが求められています。われわれがもつ顔認証技術は、米国国立標準技術研究所(NIST)の評価テストにおいて世界第1位の評価を取り続け、グローバルで認められるブランドになってきました。とはいえ、顔認証技術をただ売るだけではビジネスとして小さいので、顔認証を核としたサービスモデルをつくっていきます。芽は出ましたので、これからは着実に伸びていくでしょう。
──中期経営計画では、収益性を改善し、営業利益率5%達成を目標として掲げていますが、目標実現のために今取り組むべきことは何でしょうか。
営業利益率5%は以前からの目標です。言い始めた頃、国内企業の平均営業利益率は3~4%くらいでしたが、今や7~8%に上がっています。5%という数字は低いと思っていますが、まずは早急に達成したいと取り組んでいます。
15年には4.4%まで上がり、目標達成が狙えるところまできましたが、いろいな事業でロスコストが発生し、マイナスになってしまいました。この経験があるので、まずは赤字事業を切り離し、黒字化していくことを徹底しています。16年、17年も取り組み、これからも継続していきます。ただ、ロスをなくすだけでは達成できないので、利益の出るビジネス、例えばセーフティ事業のようなものを早く立ち上げ、利益に貢献させていきます。これはスピードの勝負だと思っています。
──新規事業だけで、全体の営業利益率を5%まで引き上げるのは難しいのではありませんか。
これまでは技術を開発し、上から下まで、開発、適応、保守までを提供してきました。これには多くの人材が必要になりますので、営業利益率を5%までに伸ばすのは非常に難しいです。
そのため、グローバルではプラットフォーマーになろうと考えています。SI事業をやるのではなく、AIや顔認証のプラットフォームをお客様に提供し、自由に使っていただく。プラットフォームのフィーとして対価をいただくのです。今、グローバルで利益率のいい会社というのはすべてを自社でやらず、完全に水平分業になっています。ただ、日本ではこれまで通り、上から下まで責任をもって提供していきますが、国内も徐々に変わるかもしれませんね。
──国内のSI事業を縮小させるということですか。
いいえ。それを求めるお客様がいる限り、続けていきます。そのなかで利益率を上げていきます。例えば、これまでお客様ごとにゼロから組み立てていますが、全体の30~40%の部分を標準化し、残りの部分をお客様に合わせてつくり上げていきます。また、先行投資はかかりますが、クラウド化、サービス化は非常にいい一定の長いロングレンジで収益が入るモデルなので、国内も少しずつSIからクラウドサービス化の方向に進めています。こうした取り組みにより利益率を上げていきます。
変化のスピードに合わせる
──初年度で見直すこととなった中期経営計画ですが、どのような点を変えていくのでしょうか。
細かいところは検討中ではありますが、3年ごとの中期計画ではなく、毎年度修正や補完などを行うローリング方式に変えていきます。ここ1、2年で世の中の変化のスピードが速くなっています。3年ごとに計画を立てていては、この変化のスピードに遅れてしまいます。つまり、変化のスピードについていくため、ローリング方式に変更します。
──売上高が最盛期の半分近くまで減ってしまいましたが、この縮小はいつまで続くのでしょうか。
以前は5兆円以上の売り上げがありましたが、半導体、PC、携帯電話の事業を切り離したことで3兆円弱までになりました。しかし、切り離した事業はボラティリティーが高い事業で、いい時はいいですが、悪い時は大きなマイナスになってしまいます。ここを続けるよりもわれわれの強みを生かせる領域、ITやネットワーク、SIなどに特化したい、社会ソリューション事業に集中したいと考えています。
これ以上、縮小させる計画はありません。ICTをベースとした事業対応をつくり上げて、それをベースに成長につなげていく。それを早いスピードでどこまで進められるか。次は成長のフェーズに入っていくと考えています。
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