そして再成長へ
──18年は顔認証やAIに重心を置くのでしょうか。
顔認証やAIはそのままではビジネスになりません。一昔前は強い技術をもち、それをどんどん開発していけば強い製品になりました。強いテクノロジーそのものが価値になり、どんどん売れていきました。しかし今は、どんなに強いエンジンをもっていても、それで何をするのか、どんな価値を生み出せるのか、その価値がお金になるのかが問われます。つまり、今までのように技術だけ一生懸命に磨き上げて世界一になっても、ビジネスにつながりません。わが社も同じで、いい技術をたくさんもっていても数字につながらなかったのはそのためだと思っています。
これまではシーズベースのアプローチをしてきましたが、これからは世の中のニーズ、世の中にどういう困りごとがあって、それを解決するためにどんな技術を組み合わせて価値をつくればいいか、ニーズベースのアプローチを強化していきます。われわれが生み出した技術を受け入れて売れる市場の大きさも重要です。われわれがもっている価値に一番マッチするビジネスをつくっていきます。
──NECは東京五輪・パラリンピックのゴールドパートナーですが、20年に向けた意気込みを教えてください。
わが社はセーフティや安全・安心の領域で、社会になくてはならない企業だと自負しています。これまで取り組んできたセーフティの技術やノウハウの集大成として、パートナー様とコラボレーションしながら安全な五輪・パラリンピックを実現していく。安全、安心を支えているのがNECであることを、またグローバルに展開できる能力をNECがもっていることをアピールできれば、そこからいい形の成長ができるのではないかと考えています。多くの人がいらっしゃる東京2020大会で、グローバルでNECの認知度を上げていきたいと考えています。
3年ごとに計画を立てていては、変化のスピードに遅れてしまいます。
変化のスピードについていくため、ローリング方式に変更します。
<“KEY PERSON”の愛用品>会議室に風を起こす
定期的に買い替える愛用品が扇子だ。その時の気分で絵柄を選ぶ。今年はデパートで見かけた相撲柄の扇子。夏の時期だけではなく、ふだんも持ち歩き、会議などで気持ちがいきづまった時にあおぎ、気分転換をしている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
11月上旬に開催した自社イベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」で、新野社長は「NECは住友グループの一員である。住友の事業精神は私たちにとっても根底にある」と話し、住友の事業精神の3か条「信用を重んじ 確実を旨とする」「浮利にはしり 軽進すべからず」「自利利他 公私一如」を紹介した。なぜ今、住友の事業精神を語ったか。
国連は30年に向けた開発目標SDGsを打ち出し、達成のために国連やNPOだけでなく、企業も事業を通じて社会の課題の解決にむけて貢献をすることを求めている。「NECは未来社会を見据えながらお客様の課題に取り組み、社会課題の解決を目指す社会課題基点で事業を考えている。社会的な事業の責任と、われわれの事業は同じベクトルをもっている。住友の事業精神はこれを端的に表しているので、あえて伝えたいと思った」と新野社長は説明する。(海)
プロフィール
新野 隆
(にいの たかし)
1954年生まれ。77年、京都大学工学部を卒業しNECに入社。金融向けの営業畑を歩み、2006年に金融ソリューション事業本部長に就任。11年6月に取締役 執行役員常務、同7月に同職 兼 CSO、12年4月に代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO 兼 CIOに就任。16年4月より現職。NECがCEO職を置くのは新野氏が初で、グローバルに向けて実質的トップを明確化するのがねらい。
会社紹介
1899年創立の電機メーカーで、正式社名は日本電気(にっぽんでんき)。パブリック、エンタープライズ、テレコムキャリア、システムプラットフォームの4領域で事業を行っており、通信とITの両分野に強みをもつ。2017年3月期の連結売上高は2兆6650億円。従業員は10万7729人(17年3月末時点)。連結子会社は238社(同)。