クラウドネイティブでなくても
データの利活用は可能
――グーグルは、最先端の技術で世界に破壊的な変化を与えてきた企業です。勝手なイメージかもしれませんが、新しいサービスでレガシーなシステムを一掃してしまうような印象を持っていました。
それは違います。「過去に構築した堅牢なシステムは“財産”である」という認識です。それと新しいテクノロジーを組み合わせることで、新しい知見を獲得していただくのがポイントです。
1990年代のバブル崩壊までは日本も景気が良く、旺盛なIT投資がありました。日本企業の基幹システムは、変革に対する柔軟性の観点で、今は“レガシー”と呼ばれていますが、堅牢がゆえにまだまだ現役で動いているわけです。
アメリカは、大きな不況を迎えていた80年代にIT投資がストップしていましたが、景気が回復した90年代後半から2000年前後のタイミングでシステムを作り替えたことで、今のようなアジャイルの時代に対応できる素地ができていました。一方の日本では、90年代半ばは、本来はそろそろシステムを全面的に一回作り替えようという時期だったのですが、それが許されない経済環境になったために、企業の再編に伴うシステムの統合や、インターネット対応といった“化粧直し”にとどまり、全部作り替えるという“刷新”の動きにはならなかった。
――日本のIT投資は「守りのIT」に偏っているという指摘もありますが、今で言うレガシーシステムが構築された時代は、むしろ攻めていた。
私自身がSIerでしたので、IT担当者や開発者の気持ちはよく分かるんです。やりたいことはいっぱいあったのに、景気に左右されて、バブルの後は全部止まってしまった。だから、レガシーと呼ばれるシステムを指して「モノリシックで融通が効かない」と言うのは、表面的なコメントとしては正しいですが、お客様がどういう気持ちで当時それを作ったか、技術的になぜこうなったという当時の状況まで理解した上で、データをどう活用するかという議論がなければ、日本企業の競争力の形成はできないと考えています。
――バブル崩壊以来、四半世紀にわたって停滞していた企業のシステムに、風穴を空けるのがグーグル・クラウドの技術ということですね。
従来の基幹システムにあるデータを活用するための技術が出てきたので、これを使わない手はない。いまのシステムを丸々作り替えるのではなく、ツールを使うことで活用が進められる。クラウドネイティブでないとデータ活用ができない、ということは決してありません。お客様の現行システムの特徴・構成をよく知るSIer各社と深く議論し、例えばどの部分を疎結合化するのかといったことを、お客様のビジョンに寄り添った形で 実現していきたいと考えています。
日本企業のSoRには宝の山のようなデータが蓄積されている。そこから知見を得ていただけるということは、日本のお客様にとっての最高のメリットだと思います。また、世界各国で先行して変革を進めている大手企業を、ご支援してきた実績が私たちにはあります。そこで得たノウハウを活用すれば、日本が今世界に仮に出遅れていたとしても、時間を取り戻すことは十分可能と考えています。
Favorite
Goods
10月に発売されたグーグルの最新スマートフォン「Pixel 4」を早速活用している。AIエンジンの力で最適化された、広角/望遠のデュアルカメラを搭載。出張先、旅先、趣味のランニング中など、昼夜問わずどこでも美しい写真が撮れるところがお気に入りのポイント。
眼光紙背 ~取材を終えて~
本当に「わくわく」できる舞台
「本当に面白いですよ。わくわくするようなテクノロジーが山のようにある」。グーグルに来てみていかがですかという質問に対し、平手代表はこのように答える。「わくわくするような」という言葉は、外資系企業に勤める日本人エグゼクティブがしばしば用いる表現だ。英語のスピーチなら「exciting」と形容するところを、日本語にするとこのような言い方になるのだろう。
ただ、これは新しい製品やサービスを紹介する際、比較的安直に付けられる修飾語でもある。エキサイティングと声高に叫んではいるが、そう話す人の表情はさしてエキサイトしていないことも少なくない。
では、平手代表はどうか。グーグル・クラウドのオフィスで見せた表情は、本当にエキサイトしている人のそれだった。“失われた10年”がいつの間にか20年、30年になり、それでもモダナイズが成し遂げられていない日本の基幹業務システムに、風穴を空けることのできる技術を、ここへ来てようやく見つけることができたからだ。
オフィスの受付には、社長就任を祝って、日本のあらゆる大手ITベンダーから届いた胡蝶蘭が飾られていた。グーグルの技術を、日本の顧客に届けてくれる彼らパートナーがいるからこそ、平手代表も本当に「わくわく」できるのだろう。
プロフィール
平手智行
(ひらて ともゆき)
1961年生まれ。横浜市出身。87年、日本IBMに入社。アジア太平洋地区経営企画、米IBM戦略部門を経て、2006年に日本IBM執行役員と米IBMバイスプレジデントに就任し、業種別事業やマネージドサービス事業を担当した。12年、ベライゾンジャパンの社長に就任。15年8月、デル日本法人の代表取締役社長に就任。19年8月、デルおよびEMCジャパンの代表取締役会長に就任。19年11月より現職。
会社紹介
米グーグルのクラウドサービスを扱う日本法人として2016年に設立。法人向けクラウド基盤「Google Cloud Platform」および、コラボレーション/生産性向上ツールの「G Suite」を提供する。GCPは16年に東京リージョン、19年に大阪リージョンを開設した。近年はエンタープライズ市場向けビジネスの拡大に注力しており、米グーグル・クラウドでは19年1月より元米オラクル幹部のトーマス・クリアン氏がCEOを務めている。