PBXも網羅する製品戦略
顧客対象は地方、SMBにも拡大
――需要拡大を踏まえ、どのような販売戦略を考えておられますか。
SMBや地方市場、特定業種に強いパートナーを拡充していきます。日本市場においては、まずは大企業に強い大手・中堅SIerなどと協業する形でパートナーエコシステムを構築し始めましたが、大企業は大都市圏に偏在していますし、当社自身に全国くまなく営業所を構えるリソースがあるわけではないので、地方市場に対しては有効な提案ができていませんでした。本来、ZoomはSMBでも大きなメリットを享受していただけるツールです。地域的なカバレッジという意味でも、SMBへの提案をしっかりやっていくという意味でも、パートナーエコシステムの拡充は重要な施策です。3月に発表したSB C&Sとのディストリビューション契約はその第一歩と言えます。
――サービス内容の拡充についてはどんなロードマップがありますか。
現在、国内のデータセンター(DC)は東京にしかないのですが、年内に大阪にも開設する予定です。また、グローバルですでに展開しているクラウドPBXサービス「Zoom Phone」の提供を国内でも開始したいと考えています。自分の端末にコールがあった際に、受話器を取れば音声、クリックすれば映像も活用してコミュニケーションができる。「Zoomする」だけでどんなコミュニケーションもリモートでシームレスにできるような世界をつくっていきたいですね。
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ZVCの従業員は福利厚生としてビジネス書から漫画まであらゆる書籍を自由に経費で購入できる。移動時間が読書タイムだという佐賀カントリーゼネラルマネージャーは電子書籍リーダーの「Kindle」を愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
“最先端”だからこそ楽しい
最初のキャリアとして選んだのは日本IBMのThinkPad開発エンジニアだった。「オタクの趣味の延長だった」と振り返る。開発中のPCを自宅に持ち帰り、一晩中開発に奮闘することもあった。「PCに触れていれば自分が最先端にいられるように感じられた」のだ。
IBMの後は、シスコシステムズ、ヴイエムウェアへと移籍。一見、ビジネスドメインが異なるように見える3社だが、PC、ネットワーク、仮想化技術と、それぞれの分野で市場のトレンドをけん引してきた企業だという共通点がある。「IBMに入った時は、PCこそが最先端のテクノロジーを集積したものだった。いつでも“最先端”にかかわる楽しいことをやりたいと考えていた」。“仕事は楽しむもの”という哲学を持つZVC JAPANの佐賀文宣・カントリーゼネラルマネージャーにとって、最先端のビジネスを追い求めたキャリアは、楽しい仕事を追いかけてきた軌跡でもある。
現在は、ZVC JAPANのトップとして日本のビデオコミュニケーション市場で成長を目指す。かつて身を置いた市場に戻ってきたが、同社には既存のビデオコミュニケーションツールベンダーにはない“最先端”の要素があるという。今の仕事は楽しいか――。その質問に「もちろん」と即答する。
プロフィール
佐賀文宣
(さが ふみのり)
北海道出身。1992年北海道大学工学部修士課程修了後、日本IBMに入社しThinkPadの開発エンジニアに。その後、PC部門におけるアジア太平洋地域のプロダクトマーケティングやパートナーセールスを担当した。2006年、シスコシステムズ合同会社入社。同社が買収したWeb会議システム「Webex」のパートナー開拓に貢献。13年にヴイエムウェアに入社しパートナーマーケティングを統括する。19年2月、ZVCに入社し現職に就いた。
会社紹介
米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZVC)は、2011年に設立したコミュニケーションプラットフォームベンダー。オンラインミーティングサービス「Zoomミーティング」など、ビデオを中心とした遠隔コミュニケーションツールを提供する。近年ではクラウドPBX市場にも参入している。日本法人であるZVC JAPANの設立は18年で、従業員数は約35人(19年末時点)。