強いリーダーシップを発揮する
――鴨居さんは、この4月1日付で社長に就任されたわけですか、大変な時期に大役を引き受けることになった経緯を教えていただけますか。
さすがにコロナ・ショックは予測していませんでしたよ(苦笑)。正確に言えば、19年10月にNEC本体に入社し、シニアコーポレートエグゼクティブという役職を拝命しました。そのときは、どの事業を任されるかは決まっておらず、いくつかの選択肢がある状態でした。最終的にアビームコンサルティングに決まったのが今年1月。その前後から外部環境が劇的に変化して今に至ります。
あとから知ったのですが、前任の岩澤(俊典・前社長)さんも、リーマン・ショック直後の09年にトップに就任され、混乱期に強いリーダーシップを発揮されたと聞いています。私がこのタイミングで社長を任されたのも運命だと受け止め、岩澤さんに負けないよう力強く経営の舵取りをしていく所存です。
――NECを選んだのは、どのような思いからでしょうか。富士通や東芝も外部人材、特に外資系のキャリアを持つ人材を積極的に採用しています。
私は米国IBMをはじめとする外資系企業でグローバル企業の経営コンサルティングやシステム構築に20年余り従事してきました。NECの経営中枢がどういう考えを持って私を受け入れたのかは推測するしかありませんが、米国と欧州で累計11年に及ぶ海外勤務を通じて、欧米グローバル企業のダイナミックな経営を肌で感じてきた一人ではありますので、NECグループの成長に私のキャリアが役立つと捉えられたのではないでしょうか。
とはいえ、アビームコンサルティングは、NECグループでありながらも、経営方針としてはNECとはあくまでも対等な関係です。システム構築ではNECグループの持つ技術も活用しますが、一方でSAPをはじめ世界中の優れた技術を積極的に取り入れています。コンサルティングファームとして、ベンダー色が非常に薄く、顧客とともにさまざまな経営的な課題を解決していますので、グローバルの経営コンサルティングのキャリアを持つことも、私に白羽の矢が立った要因の一つだと推測しています。
変化の振れ幅が極大化している今、コロナ後をしっかり見据えた課題の整理、経営改革の支援を通じて、顧客とともに将来の果実を収穫できるよう努めていきます。
Favorite
Goods
ウォーターマンの万年筆と、妻から贈られたモンブランのボールペン。ボールペンは赴任先の米国アトランタの専門店で名前を彫ってもらった思い出深いものだという。万年筆は落ち着いて手書きするときに愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「課題の連鎖」を「価値の連鎖」に転換する
昨年までは米中の貿易摩擦や英国のEU離脱によって世界経済がどう変わるかがグローバル企業の経営者の関心事だったが、コロナ・ショックで状況が一変した。「極大化した変化の振れ幅に顧客の経営がしっかり対応できるよう支えていく」と、鴨居達哉社長は話す。
鴨居氏がコロナ・ショックで最も衝撃を受けたのは、「感染拡大を防ぐため国境を閉鎖し、国単位に収れんしたこと」だという。EUやASEANといった国境を越えた経済圏、さらにデータが一瞬で世界を駆け巡るグローバル経済の中で、20年余りにわたって経営コンサルティングの仕事をしてきただけに、この変容ぶりに驚きを隠さない。
一方で、大きな課題にぶつかると、その周囲にさまざまな課題も連なって出てくる。この山のようになった課題をひも解き、解決していくことで得た知見やデータは、「次の新しい時代の価値の創出につながる」と説く。「課題の連鎖」を「価値の連鎖」に転換し、より大きな価値を生み出すのが“鴨居流”のコンサルティング術。コロナ・ショック後を見据えて、顧客とともに解決の糸口を見つけ、価値の連鎖につなげていく。
プロフィール
鴨居達哉
(かもい たつや)
1961年、長野県生まれ。83年、上智大学外国語学部卒業。セイコーエプソン、プライスウォーターハウスクーパース、IBMビジネスコンサルティングサービス、米国IBMを経て、2006年、日本IBM執行役員。12年、日本IBM常務執行役員。14年、マーサージャパン社長。19年、NECシニアコーポレートエグゼクティブ。20年4月1日、アビームコンサルティング社長に就任。
会社紹介
アビームコンサルティングは、顧客企業の経営戦略の立案から業務改革、システム設計、開発、実装までトータルに支援できる日本発、アジア発の総合コンサルティングファーム。2019年3月期の連結売上高は858億円、従業員数は約5900人。13カ国・地域、29拠点を展開する。