変化への適応にやりがいを感じる性分
――どうすれば、変化への適応のスピードをより高めることができるとお考えですか。
明確な回答にならないかもしれませんが、明治維新の強い動機づけになったのは西洋列強の存在でしたよね。科学や文化、軍事などを西洋に学んで富国強兵を目指したわけですが、それは西洋という目指すべき姿がよく見えていたからなのです。西洋の存在がなければ、そのまま平穏な江戸時代が続いていたかもしれません。
NTTデータ経営研は、目指すべき姿を明確に描き、ユーザー企業や社会に向けて提言できる企業であり続けることをとても重視しています。たとえ課題が山積していたとしても、目指すべき姿があり、そこに明るい未来を描くことができたならば、人は力強く、スピード感をもって、変革を成し遂げることができるからです。
――ご就任の直前までNTTデータの副社長を務めつつ人事本部長を兼務していらっしゃいましたが、柳社長は総務畑が長かったのでしょうか。
私のキャリアで一番長いのは金融部門ですが、直近はご指摘の通り人事部門を担当しており、NTTデータグループ全体の人事制度の改革に取り組んでいました。欧米でのM&A(企業の合併と買収)や採用が急ピッチで進んでいたこともあり、国内と海外グループ会社の人事制度の整合性をどうとっていくのかが大きなテーマでした。
優れた成果を出す社員や役員にはそれ相応の報酬を支払うスタイルが、特に米国で顕著に見られます。国内においても、既存の人事制度のままでは秀でた人材を確保することは困難と判断し、既存制度とは別の新しい雇用区分を設けて、市場価値に応じた報酬を支払える仕組みを創設しました。
古巣の金融部門にいたときも金融機関システムと外部のFinTechサービスとの連携を推進しました。外部環境の変化を敏感に感じ取り、変化に適応していくことにやりがいを覚える性格なのかもしれません。今はコロナ禍の最中で、多くの方が犠牲になる厳しい状況です。それでも、この災害が収束したのちには必ず明るい未来がある。その未来を指し示すことで顧客企業や社会の変革を強く後押ししていきたいですね。
Favorite
Goods
酸素飽和度や睡眠の深さなどを計測できるスマートウォッチが最近のお気に入り。「モノにはあまりこだわりがない」という柳社長。コロナ禍で健康に関心が高まったことを受けて、機械式時計からスマートウォッチに乗り換えた。
眼光紙背 ~取材を終えて~
リアルの失敗体験が
人を強くする
デジタルツインの技術はさまざまな事象をコンピューター上で再現するものだが、NTTデータ経営研究所は脳科学を応用した独自の取り組みを進めている。例えば、広告映像などを見て人の脳がどう感じるのか、好感度はどうなのかをシミュレーションすることで、広告主の期待に沿うマーケティング効果を出しやすくする。
SIerのプロジェクトでもデジタルツインは有用だと見る。柳社長は「キャラクター育成ゲーム風に仕立てれば、楽しみながらスキルを習得できる」と話す。過去の失敗プロジェクトをデジタルで再現し、経験値を高めたキャラを動かすことで、不条理な悪条件も乗り越えていく。実際、過去の知見のバーチャルな追体験によって失敗プロジェクトを未然に抑制できるケースは多いという。
ただ、リアルの失敗経験がないと、「想定外のことが起こったときに対処できなくなる危険性がある」とも。コロナ禍のような予測困難な事態に直面したときこそ、人の力量が試される。NTTデータ経営研は、リアルの失敗体験に裏打ちされたプロフェッショナルな人材を揃えていると自負する。想定外の事態に直面しても、困難を克服し、明るい未来を描ける提言を発信し、自らのビジネスの成長にもつなげていく。
プロフィール
柳 圭一郎
(やなぎ けいいちろう)
1960年、福岡県生まれ。84年、東京大学法学部卒業。同年、日本電信電話公社入社。88年、NTTデータ通信(現NTTデータ)。2006年10月、金融ビジネス事業本部資金証券ビジネスユニット長。09年、NTTデータジェトロニクス社長。12年、NTTデータ総務部長。13年、執行役員第二金融事業本部長。16年、取締役常務執行役員総務部長兼人事部長。18年、代表取締役副社長執行役員人事本部長事業戦略担当。20年6月16日、NTTデータ経営研究所代表取締役社長に就任。
会社紹介
総勢300人余りのコンサルタントからなるNTTデータグループのコンサルティング会社。調査研究や政策提言、構想・企画立案などさまざまな分野でのコンサルティングサービスを手がけている。