2ティア型の販売形態も導入
――直近ではどんな戦略に力を入れていますか。
今年度(2021年1月期)はプラットフォームソリューションをしっかり展開していくため、新たなグローバルパートナープログラムを5月に立ち上げました。バリューベースの価格設定や、新規案件に対するインセンティブ、トレーニングコンテンツなどを体系化し、世界では既に約200社がこの新たなプログラムに参加していただいています。ようやく日本語化もできてきましたので、国内でも年内に10社から20社くらいのパートナーには、新プログラムに移行していただけると考えています。さらに、従来の再販契約に加えて、OEMパートナーやディストリビューター契約、リファラル(案件紹介)パートナーなど、新たなパートナーカテゴリーを設けました。
――ここで言う「プラットフォーム」とはどのようなものでしょうか。セキュアワークスのビジネスというと、製品ではなくサービスの提供というイメージがありましたが……。
当社はあくまでベンダーニュートラルで、主要メーカーの多くのセキュリティ製品を扱えることが強みの一つになっています。そのうえで、我々自身の経験を元にした脅威検知・対応などのソフトウェアプラットフォームも作っており、これはSaaSの形態で提供可能となっています。確かに、従来中心としていたのはお客様のシステムを当社が監視するマネージドサービスでしたが、米国では、このようなプラットフォームをお客様に提供し、お客様が自分でセキュリティ運用をするという形態も始まっています。このモデルをさらにパートナーにも広げることで、パートナー各社が複数のお客様に対してMSS事業を提供するといった展開を考えています。
――ディストリビューターとの契約も新たに開始するということですが、いわゆる2ティア(2層)の流通モデルは、一般により幅広いチャネルでの製品・サービス提供を目的とするものです。新たな顧客層の取り込みをねらうということでしょうか。
その通りです。中堅・中小企業や、地方の企業でも、セキュリティに悩まれている方々は大勢いらっしゃいますので、そういったお客様にアクセスするには2ティア型のご提供が最適だと考えています。
――金融機関やグローバル製造業のような大手企業を主要顧客としていたセキュアワークスから、中堅・中小企業という言葉が聞かれるのは意外です。提供するサービスも、大企業向けとは異なるのですか。
具体的なソリューションの一つとしては、インシデント管理・対応(IMR)サービスを「リテーナー方式」で提供します。インシデントが実際に発生してからIMRを契約していただくこともできるのですが、まさに今攻撃に遭っているというとき、新規契約のやりとりで対応開始まで数日を要してしまっては、その間に被害が拡大してしまいます。そこで、当社の対応サービスをあらかじめ年間40時間といった単位で購入していただくことで、何か起きたとき、すぐに火消しに駆けつけることができる。これがリテーナー方式です。もし時間を使わなかったときは、人材の教育や、組織構築のアドバイスなどのコンサルティングにも転用できますので、投資が無駄になりません。このようなサービスを2ティア型でお届けしていきたいと考えています。
――プラットフォーム展開とパートナーエコシステム強化という二つの戦略が、互いに関連しているというわけですね。
密接に関連しています。プラットフォーム事業で成功するにはスケールの要素が非常に重要ですから、当社だけの力では成り立ちません。昨年度は日本市場での当社事業全体のうち、パートナー経由の売り上げは20%以下でしたが、今年度は30%を超える見込みです。来年度はパートナービジネスを50%以上に伸ばしていきたいと考えています。
――冒頭、DXにはサイバーセキュリティが必須というお話がありました。国内のさまざまな企業がDXに取り組もうとしており、セキュアワークスの潜在的顧客層は大きく広がりそうですね。
企業のITがオンプレミスからクラウドに広がり、ネットワークの入り口と出口だけを監視しておけばいい時代は終わりました。セキュリティホールやマルウェアの数は爆発的に増えており、それらを利用した標的型攻撃の数も倍増しています。しかも、DXで新たな成長領域に進出すればするほど、守らなければならないITも広がっていきます。セキュリティがDXの足かせにならないよう、我々やパートナーのリソースを活用いただきたいと考えています。
Favorite
Goods
日立、サン、レッドハットを卒業するとき、秘書やチームからそれぞれ贈られた手帳、ペン、名刺入れを今も大切に使っている。チームに対する感謝の深さと同時に、チームの人々が廣川社長の好みを熟知するほど、親しまれる人柄であることが伝わってくる。
眼光紙背 ~取材を終えて~
負けられない戦いがある
「当社の従業員も含め、世界ではホワイトハッカーと呼ばれるようなセキュリティ人材が、悪者たちと戦っている。ここは戦場なんだという思いを強くしている」
セキュアワークスに来る前、廣川社長は「セキュリティ=守りの仕事」というイメージを持っていたと話す。しかし、サイバー攻撃の最前線に立つ社員の働きぶりを見ると、守るだけではなく、むしろ攻めていくのが現代のセキュリティ企業であると感じているという。気が付かないだけで、企業のシステムには既に悪人が入り込んでいる可能性もある。隠れた脅威を見つけ出し、盗みや破壊が行われる前にそれらをつぶしていく。
「自動運転車が実現したらこんなに便利なことはない。しかし、悪者に乗っ取られ、ブレーキを無効化されたり、勝手にどこかへ連れていかれたりする可能性があるとしたら台無しだ」(廣川社長)。DXが進めば、私たちの社会でサイバーセキュリティが求められる局面はますます増えていく。「我々は、負けるわけにいかない戦いに挑んでいる」と力を込める。
プロフィール
廣川裕司
(ひろかわ ゆうじ)
1959年、神奈川県生まれ。81年、慶應義塾大学工学部卒業。同年、日立製作所入社。98年から2003年までストレージのグローバル営業部門統括を務める。サン・マイクロシステムズ執行役員、日本BEAシステムズ代表取締役を歴任後、08年に米レッドハット副社長兼日本法人の代表取締役社長に就任。16年にミドクラジャパン代表取締役社長、17年に米ホートンワークス副社長兼日本法人の執行役員社長に就任。19年4月、セキュアワークスジャパン(現セキュアワークス)代表取締役社長に就任、現在に至る。
会社紹介
1999年、米ジョージア州アトランタで創業。マネージドセキュリティサービスのほか、セキュリティとリスクのコンサルティングサービス、脅威情報提供サービス、インシデント管理・対応サービスを手がける。2011年にデルによって買収されるが、16年にデル傘下を継続したままNASDAQに再上場。20年1月期の売上高は5億5280万ドル(約600億円)。日本法人の設立は13年。