高成長を続けるレッドハットを率いていた望月弘一氏が2020年9月、日本ヒューレット・ パッカード(HPE)の新社長に就任した。かつてHPEはハードウェア販売が主体だったが、 現在はグローバルで「22年までにエッジからクラウドまでのすべての製品をas a Service で提供可能にする」と、ビジネスモデル変革のさなかにある。日本HPEをどう導いていく のか、就任4カ月の望月新社長に聞く。
HPEに感じた
オープンカルチャー
――SIサービスのディメンションデータ、オープンソース(OSS)ビジネスのレッドハットと、これまで望月社長はサービス、ソフトウェア畑で活躍されてきたという印象です。新たにハードウェア主体のビジネスに挑戦される理由を教えてください。
よくその点を指摘されるのですが、私はIBM出身であり、80年代から90年代まで同社のビジネスモデルはハードウェアを中心としたものでした。汎用機に始まり、オフコン、サーバー、PCという変遷を20代から30代で経験してきたので、ハードウェアビジネスには土地勘があります。
そして現在のHPEは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやサービスも提供しています。IBMでのキャリアを振り返ると、ハードウェアの営業でスタートして、それ以降にソフトウェアやSI、アウトソーシングとサービスを含めた提案活動の経験を積んできました。そういう意味では、違和感は全くありません。
――なぜ今回、日本HPEを新しい活躍の場として選ばれたのでしょうか。
私が5年間在籍していたレッドハットにとって、HPEは世界で最大規模のパートナー企業の1社であり、日本でも以前から協業の機会はありました。その中で、HPEという会社に対する理解も深まりましたし、素晴らしい点も見えていました。
HPEの素晴らしさは、自社のハードとソフトを持ちながら、業界でベスト・オブ・ブリードの製品を含めた提案と実装をしているところです。自社製品にこだわらずに、OSSベースの優れた製品を躊躇なく担いで実装できるのも魅力でしたし、協業した際のHPEのメンバーがオープンなカルチャーを持っていて、レッドハットのカルチャーと相通ずるものがあると感じていました。市場での要望を把握し、それに対して機敏に動こうという意識が高い会社だと思います。
エッジとHPCが
2ケタ成長を継続
――昨年は新型コロナウイルスの大きな影響があったと思いますが、業績はいかがでしょうか。
グローバルの数字では、20年度の第4四半期(20年8-10月)は前年の同四半期とほぼ同等で、いったん落ち込みましたが現在はU字回復した形です。日本も同じ傾向で、5-10月の第3・第4四半期で着実に改善しています。経済全般では大きなインパクトがあってもIT投資意欲は減退していない印象で、その中でもHPEは市場より高い伸び率で成長しています。
――ユーザーの投資内容やHPE製品のニーズに変化はありましたか。
我々の主力であったコンピュート、ストレージは若干落ち込んでおり、コロナ前に戻るにはもう少しだけ時間がかかると見ています。逆にコロナの前後をまたいで継続的に二桁成長している領域もあり、一つがアルバ(Aruba)のエッジ向けのネットワークソリューション、もう一つがハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)です。
あとは、オンプレミス環境の従量課金サービスであるHPE GreenLakeに対するご要望が強いですね。コンサンプション(消費)型ITサービスは向こう3年連続で高成長を続けるといわれていますが、GreenLakeは市場の伸びを超えるさらに速いスピードで伸びていて、非常に手応えを感じています。グローバルでの伸び率も日本が一番高いです。
――日本市場においても、オンプレミスの環境を買い切りではなく、“as a Service”で使いたいという要求がそれだけ強いということでしょうか。
ITインフラを活用していく上で、パブリッククラウドとオンプレミスそれぞれにメリットとデメリットはありますが、GreenLakeはオンプレミスのメリットを生かしながら、デメリットを解決するものです。アプリケーションはオンサイトにあってデータのセキュリティも堅牢ですし、他方で今後の需要予測が読めない中で、IT資産の所有に伴う固定資産化などのデメリットを解決することができます。クラウドから元に戻るケース、ミッションクリティカルなアプリケーションの運用などの理由で採用していただき、非常に高い評価をいただいています。
パートナーのSIer各社にとっても、パブリッククラウドのリセールをするモデルよりも、GreenLakeで自らコンサンプションベースの提供形態を仕立て上げ、独自のソリューションを付加してお客様に届けるほうが、価値を提供しやすいと思います。
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