インフォマートは、企業間取引を電子化する「BtoBプラットフォーム」の運営を通じて、企業内のペーパーレス化や業務効率化を推進してきた。飲食店や卸売業、メーカーなどのフード業界を中心にビジネスを拡大する中、今年1月には、常務取締役だった中島健氏が新社長に就任した。「国内で一番使われるビジネスプラットフォーム」の実現を目標に掲げる中島社長に、今後の成長戦略を聞いた。
(取材・文/齋藤秀平 写真/大星直輝)
大化けするポテンシャル
――今年1月に社長に就任しました。今の率直な気持ちを教えてください。
期待と不安が入り混じっているのが率直な気持ちです。まず期待について説明すると、インフォマートは、これからもっと大化けするポテンシャルを持っている会社なので、リーダーとして非常にわくわくしながら日々を過ごしています。一方で、約600人の従業員とその家族の命を預かっています。全員を幸せにしてあげなくてはいけないので、この部分では不安を感じています。ただ、これについては必ず乗り越えたいと強く思っているので、心地いいプレッシャーと捉えています。
――この2年ほどは新型コロナ禍の影響が各方面に出ました。主戦場とするフード業界も同様だと思いますが、これまでのビジネスの状況はいかがでしょうか。
ものすごい追い風と向かい風が同時に吹いている感じですね。先に追い風について話します。コロナ禍では、DXに向けた機運が世の中で一気に高まりました。企業間取引では、請求や発注、納品など、さまざまなやり取りがあります。紙を使う場合は、出社して、ハンコを押して、会計システムに入力する作業が必要ですが、われわれの製品は、こうした企業間取引をクラウド上で完結できます。リモートワークとの親和性は非常に高く、お客様の導入ペースはものすごい勢いで伸びています。あとは法整備関連です。大きな例としては、今年1月に施行された改正電子帳簿保存法や、2023年10月にスタートするインボイス制度があります。紙のやり取りのままでは大変なことになると多くの企業が認識しているので、コロナ禍のリモートワーク需要とは別に、弊社にとっては追い風になっています。
逆に向かい風は、やはり外食産業がコロナ禍で大きなダメージを受けていることです。弊社は、今はフード業界に幅広く製品を広げる方針を取っていますが、数年前までは“飲食店のためのシステム屋”でした。弊社の製品を利用している飲食店は多いので、われわれの製品を使わなくなったり、仕入れが減ったりすることは、弊社のビジネスに影響する面があります。
日本のためになる「80点」の製品を提供
――DXに向けて引き合いが増えているとのことですが、BtoBプラットフォームが選ばれる理由や、他社にはない強みについては、どのようにお考えですか。
長年にわたって培ってきたノウハウを生かした導入サポートの手厚さは、他社にはない一番の強みです。具体的には、弊社の製品を導入するお客様だけでなく、取引先の利用もサポートし、お客様と取引先が一緒に使う割合を増やしています。弊社の製品は企業間取引を対象にしていますから、導入した企業が使うだけでは効果は出ません。導入した企業に加え、取引先にも使ってもらうことが重要です。他社でもできそうに見えますが、簡単ではありません。例えば請求書のシステムを例に挙げると、ある企業が導入した場合、取引先が100社あったとしたら、何もしなければ、同じようにシステムを使う取引先はせいぜい5社~10社くらいにしかならないでしょう。弊社の場合は、平均8割くらいが利用するようになっています。説明会の開催や電話など、泥臭いことをたくさんやっており、こうした活動を通じて蓄積した独自のノウハウは大きな武器になっています。
――導入企業に加え、取引先も使うとなると、機能面も重要になると思いますが、そのあたりについてはどのように認識されていますか。
機能面については、お客様の声を反映したかゆいところに手が届く機能が満載だと認識しています。弊社の創業者の村上(勝照元社長、17年に死去)は、とにかくお客様が求めている製品の開発を哲学にしていました。お客様の声を集めて製品に反映させることは徹底的にやっているので、これはお客様に受け入れられる要因になっています。ただ、機能が満載である一方、もっとシンプルかつ簡単な使い勝手やUIにする余地は残っており、この部分は課題です。もう一つの強みは、価格の安さです。カスタマイズせず、同じものを使ってもらうことで、価格を抑えています。
――BtoBプラットフォームの導入企業は中堅・大手企業が多い状況です。顧客に合わせてカスタマイズしないのはなぜですか。
弊社の製品は、お客様によっては我慢して使っていただく必要があります。確かに「こういう機能がほしい」という要望はお客様ごとに異なりますが、みんなにとって100点のものをつくろうとすると、標準化できなくなってしまいますし、価格も上がります。先ほど示したことと少し矛盾するかもしれませんが、お客様のニーズのうち、本当に汎用的だとわれわれが思うことには、とことん対応します。しかし、汎用的ではない機能の場合は、お客様に「我慢して業務を製品の機能に合わせてください」との姿勢です。日本全体のためになるように、80点の製品の提供を続けています。
パートナーの拡大で着実に成果
――販売について、直販とパートナー経由の比率はどうなっていますか。
弊社のパートナーは二種類あります。一つは、お客様の紹介と取次をするリファラルパートナーで、もう一つは、お客様に対して販売をするセールスパートナーです。実動ベースの数は、リファラルパートナーが約100社で、セールスパートナーは約40社となっています。販売の比率は、今のところ直販が半分超で、パートナー経由が半分より少ないくらいの比率になっていますが、どんどんパートナー経由の販売が増えています。パートナー経由の販売が増えている理由としては、弊社の製品が“旬”だからだと考えています。特にインボイス制度絡みの需要で、請求業務のデジタル化に対応可能な「BtoBプラットフォーム 請求書」はパートナー経由で最も売れています。
――パートナー経由の販売が増えているとのことですが、今後、パートナーの数については増やしていく方針ですか。
われわれにとって、パートナーは同志なので、増やしていくことを最重視して取り組んでいきます。パートナーに製品を理解してもらい、取扱量を増やして上手に売ってもらうことは弊社の中で最も大きな課題の一つです。既にサポートの面で非常に力を入れて取り組みを展開している部分もあります。具体的には、パートナーに対する勉強会をかなり手厚くしたり、共同セミナーを開催したりしています。積極的に販売したパートナーに対する表彰制度や、パートナー向けのサイトもあります。販売のサポートでは、営業先に同行訪問することをやっています。パートナー関連では、成果も着実に出ています。例えば、昨年12月にはキヤノンマーケティングジャパンとセールスパートナー契約を結んだことを発表し、今年1月にはSB C&Sとディストリビューター契約を結びました。われわれの製品で実現したいことは、短期的には目の前のお客様には嫌がられるかもしれませんが、中長期的には日本のためになると考えているので、この点に賛同してくれる大手のディストリビューターやシステム会社は多い状況です。
――最後に今後の目標を聞かせてください。
国内で一番使われるビジネスプラットフォームを実現することです。弊社は今まで、BtoBプラットフォームを提供してきました。おかげさまでフード業界では、電気、ガス、水道、インフォマートと言ってもらえるようになっています。ただ、性能がよくても、他の製品に負けることはあるので、BtoBプラットフォームだけでは負けてしまう可能性もあります。ビジネスプラットフォームを構築するためには、自社の製品を強化していくことに加え、いかにほかのサービスと連携できるかが重要になると考えています。ストレスフリーで使えるビジネスプラットフォームにするために、他社との協業をしっかりと進めます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
中島社長は、ビジネスを「チームプレー」と例える。同じチームのメンバーと目標に向かって突き進むことで、大きな成果が得られると信じているからだ。これは学生時代に傾注したラグビーに通じるという。
ラグビーには、チームのあるべき姿を示す「One for All, All for One」との言葉がある。体と体をぶつけあう場面が多く、時には激しい痛みを伴う競技を高いレベルで経験したからこそ、チームのために自己犠牲をいとわないとの気持ちは強い。
社長に就任し、2カ月が経過した。与えられている役目は、先頭に立って、会社を成長に導くこと。今後、厳しい局面に立たされることがあるかもしれないが、ラグビーで培った「痛くてもいいと思えるかどうかが、チームの強さを左右する」との思いを胸に、「健さん」と慕う社員たちのためにしっかりと汗を流していく考えだ。
プロフィール
中島 健
(なかじま けん)
1966年、東京都生まれ、88年、早稲田大学教育学部を卒業し、同年、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。米国カリフォルニア州への駐在を経験したほか、国内支店や本部に在籍。2010年にインフォマートに入社。取締役兼経営企画本部長に就任し、「BtoBプラットフォーム 請求書」を立ち上げたほか、戦略人事や営業統括などを担当。常務取締役を経て22年1月から現職。
会社紹介
【インフォマート】世界中の企業や人を結ぶことを目指した「BtoBプラットフォーム」を運営。利用企業数は約70万社、2021年度のプラットフォーム上の流通金額は18兆円を超える。