本来ならば、インフラとコンテンツが喧嘩しても意味ないことだ--。日本レコード協会(RIAJ)の会員19社と日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ファイル交換サービス「ファイルローグ」を提供する日本MMO(松田道人社長)を相手取り仮処分申請を申し立てたことについて、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事は、こう語る。「コンピュータやインターネットといったインフラ側とコンテンツ制作側は、互いのビジネスをより発展させるために、本来ならば協力関係にあるべき。争い合う関係にはないのだが…」と、肩を落とす。

「本来なら協力関係にあるはず」

 日本レコード協会の富塚勇会長は、「ファイルローグは、レコード会社が専有する複製権を、パソコンをもつ誰にでも無断で“盗ませる”行為。絶対に許せない」と、怒りを顕わにする。日本音楽著作権協会の吉田茂理事長も、「音楽CDは音楽作家にとって最大の作品発表の場所。3年連続で国内のレコード販売枚数が減少しているのは、不正コピーが横行しているからだ」と、レコード業界に同調する。

 一方、日本MMOの松田社長は、「ファイルローグは、単なるファイルを交換する仕組みに過ぎない。今の音楽ファイルが簡単にネット上を流通してしまうことが問題なのであり、ファイル交換そのものが“悪”ではない。無断複製できない、あるいは複製してもパスワードがなければ視聴できないコンテンツ制作技術の開発こそが重要」と主張する。

 著作権問題に詳しいコンピュータソフトウェア著作権協会の久保田専務理事は、「インフラ側がコンテンツ管理を放棄するのは、昔のNTTと同じ姿勢。電話の世界ではそれが通用したかも知れないが、インターネットの世界では通用しない」と話す。NTTのダイヤルQ2などを使った風俗サービスが横行した時期があったが、インフラ側は「通信の秘匿性」を盾にして関知しなかった経緯がある。しかし、ネット時代では、インフラ側がもっとコンテンツに配慮すべきだと指摘する。

 日本MMOの松田社長は、「今回の訴訟問題は、インフラ側とコンテンツ側の代理戦争のようなもの。こちらは、資金も限られたベンチャーだが、相手は弁護団まで組織している。今後、インフラ・コンピュータ業界側に不利な判例が残れば、ファイル交換の基盤であるPtoP技術やこれに派生するようなサービスは、ことごとく“悪”のレッテルを貼られ、萎縮してしまう危険性がある。結果としてコンテンツ業界側は、ますます強い権力をもつことになる」と危惧する。

 久保田専務理事は、「そもそも、パソコンとはメモリ、ハードディスク、CD-R、DVD-Rなど主要装置のすべてでコピーできる“複製マシン”だと言える。だからこそ、現金同等の価値がある貴重なコンテンツを複製できない仕組みづくりが必要。双方争うのではなく、互いに協力し合い、ネット上にコンテンツを流通させる仕組みをつくるべき。ファイルローグも、違法行為を助長して“所場代”を取るという印象を与えるのではなく、もっと真摯に対応すべき」だと考える。

 レコード協会と音楽著作権協会の間にも、ネットに対する考え方に微妙な違いがある。前者は「インターネットには、音楽関係権利者が正当な対価を受けるというシステムが未だ確立されていない」(富塚会長)と、従来通りCDによるパッケージ流通に主眼を置いた流通形態を堅持する姿勢を示している。これに対し、後者の音楽著作権協会は、「今回のファイル交換にせよ、仕組みそのものは間違っていない。問題なのは、著作権料を支払っていない点にある」と、一定の理解を示す。

 日本MMOの松田社長も、「音楽著作権協会は著作権料未払い問題を重視しているが、レコード協会はお金だけの問題ではない」と、レコード業界の思惑が深く絡んでいると話す。ブロードバンド時代の到来が叫ばれても、コンテンツがなければ意味がない。コンピュータ業界とコンテンツ業界双方の相互理解が求められている。今後、レコード協会・音楽著作権協会側では、仮処分申請に続き、損害賠償も含む著作隣接権侵害差し止め請求訴訟を起こす準備を進めている。