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普及が進まない米ブロードバンド 赤字経営による高い料金がネックに

2002/02/18 16:09

 今月始めに開かれたダボス会議で、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、「米国におけるブロードバンドの普及にはあと5年から6年かかるだろう」と語り、話題を集めた。日本では、順調に加入者を増やしているブロードバンドだが、米国ではなかなか普及しない。その理由は、料金体制にあるようだ。

 ニューヨークで開かれた世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)で、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が「米国ではブロードバンドの普及が5-6年遅れるだろう。しかし、日本では普及しつつある」と語り、シリコンバレーの注目を集めた。

 それもそのはず、昨年12月にブロードバンドのサービス提供会社であるエキサイトアットホームが倒産した記憶が、まだ離れることはないからである。

 ゲイツ会長が米国の現状を懸念する理由は何か。答えは明確である。高速回線の使用料が値上がりしているのである。

 逆に、日本ではブロードバンドのサービス会社の競争が激しくなり、値下がりが続いている。日本の方が急速に普及するステージに入ったのは言うまでもない。

 この値上がりについては、サービス会社の多くがまだ経営上赤字のため、埋め合わせするために仕方のない処置をとっている、というのが業界関係者の一般的な見解となっている。

 今のところ、米国ではブロードバンドの1か月の使用料金が50ドルから60ドルというのが平均的な値段である。アナログ回線の使用料が1か月約20ドルということもあって、「かなり高い」と考えている一般消費者が多い。

 ゲイツ会長のコメントは、「日本に遅れをとってはならない」という一種の危機宣言ともとれる。

 しかし一方で、シリコンバレーのエンジニアたちに聞いてみたところ、このような動向は今に始まったことではない、と口を揃える。

 その例として言及されるのがISDNの普及である。

 1996年頃から日本ではISDNの導入が急速に高まった。しかし、米国では全く普及しなかった。この理由としては、次の点が挙げられる。

 「日本では、市内電話をかけると1分ごとに料金が加算される。その上、電話回線を使って画像をダウンロードすると随分時間がかかる。この問題を解決するために、一般家庭向けにISDNが普及した。しかし、米国では自宅からかける市内電話の場合、基本料金のみが必要で、個別の通話料は無料である。プロバイダのアクセスポイントが市内にあれば、1日中つないでいても同じ値段なので、それほどISDNの必要性は感じられなかった」

 



 米国は巨大な国である。それだけに、ブロードバンドやISDNサービスなどのインフラレベルでの普及はなかなか難しい。

 このような理由で、米国でのブロードバンドの行方は、今後料金設定を多少なりとも低くするなり、国をあげての普及作戦などに出ない限り、ゲイツ会長の言うとおり、大幅に遅れる可能性が大きいと思われる。(飯田仁子)
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